東京観光産業ワンストップ支援センター > 事例紹介一覧 > 英語版WEBサイトでハラール料理をインバウンド旅行客に周知 ~食に制限がある旅行客が安心して日本を楽しむ

英語版WEBサイトでハラール料理をインバウンド旅行客に周知
~食に制限がある旅行客が安心して日本を楽しむ

活用した支援メニュー(最新版)
インバウンド対応力強化支援事業(令和7年度)

事業者情報

企業名
合同会社Mashal(インド宮廷料理 Mashal)
所在地
東京都大田区大森北1-10-14LUZ大森3F
HP
店の外から店内の様子がわかる

大田区大森駅から徒歩2分のショッピングセンター「LUZ大森」。このビルの3階に店舗を構えるインド宮廷料理 Mashal(マシャール)は、インドの高級ホテルや高級レストランの味に勝るとも劣らない、本格派インド料理が楽しめるインド宮廷料理(ムガル料理)の専門店だ。

シェフのモハメド・フセイン氏はインドのホテルで修業した後、日本の人気インド料理店でその腕をふるってきた。

店内にはインド特有の土窯であるタンドール窯があり、Mashalの名物はその窯を使用して作られるタンドール料理である。
じっくり焼かれた肉や魚は外側が香ばしくパリッと仕上がり、中はジューシーで人気が高い。

その他、カレーやビリヤーニーなど、人気の本格派インド料理やベジタリアンメニューが用意されており、全品、イスラム教徒の方が安心して注文できるハラール料理である。

<補助金・事業を利用したきっかけ>
もっと海外の方に来店いただきたい。そのためには多言語での周知が必要だった

オーナーである、合同会社Mashalのアリ三貴子共同代表(以下、アリ代表)は学生時代にシェフのフセイン氏と出会い、彼が作るインド料理に魅了された。

アリ代表とフセイン氏は家族ぐるみで付き合っており、フセイン氏の奥様や息子さんなども交えて常日頃から交流をしていた。折々にフセイン氏がホームパーティーで料理を作ってくれることもあり、いつしか、アリ代表は「フセイン氏の素晴らしい料理を自分が伝えたい、そして守っていきたい」と思うようになったとのこと。

アリ代表は自営業を営む家庭に育ち、一時期経理を担当していたこともあった。
そのこともあり、自らがフセイン氏のお店を出店することを決意し、2021年3月にフセイン氏と合同会社Mashalを設立して、インド宮廷料理 Mashalが誕生した。

彼の味を伝えたい、守りたい気持ちとともに、アリ代表にはもう一つ強い思いがあった。

それは、インバウンド旅行客の「食」に関する問題の解決である。
インバウンド旅行客は年々増加しており、世界各国から多くの人が日本に入国している。そこで発生する問題が、旅行客が食べられる物と食べてはいけない物の識別である。

まず一つは宗教上の理由で、ここではイスラム教を例に挙げる。イスラム教では、豚肉やアルコールなど宗教上食べてはいけないものが明確に定められており、逆に、イスラムの教えで食べてよいとされる食材は「ハラールフード」と呼ばれている。日本はイスラム文化圏ではないため、イスラム教のインバウンド旅行客は、食事の際にハラールフードのメニューを自分で識別して注文をしなければならない。

また、ベジタリアンなどの食に対する個人の主義も関係する。肉や魚などの動物性食品を避けているベジタリアンの方は、魚介成分が入った出汁を使用している日本料理に食べられないものが多い。

このような食に関する問題で、インバウンド旅行客の方が安心して日本を楽しんでいただけないことをアリ代表は気にかけており、ハラールフードを取り扱っているMashalの存在を食で困っているインバウンド旅行客の方にもっと伝えたいと考えた。

Mashalには英語が話せるスタッフがいるため、来てくださったお客様の対応は英語で問題なくできているものの、お店のWEBサイトは日本語版しか存在せず、日本語がわからない海外の方にお店の存在を伝えることができずにいた。また、店外に設置されている看板や、メニューの説明にも英語表記がなかった。

日本語がわからないイスラム教徒の方やベジタリアンの方にも安心して日本での食を楽しんで欲しいと思っていたアリ代表は、何かの糸口がないかと、東京都が運営する食のWEBサイト「EAT東京」の説明会に参加し、その説明会にてインバウンド対応力強化支援補助金の存在を知った。

シェフのモハメド・フセイン氏
広々とした開放的な店内。奥には個室もあり

<補助金・事業を活用した取り組み>
お店の英語版WEBサイトを作ることで、旅行客への周知を図る

新たに構築した英語サイト
メニューの説明に英語表記が加えられた

「インバウンドの補助金と聞くと、翻訳など一部の作業のみ補助金が活用できるのかと思っていたんです。でも、この補助金はWEBサイトやメニューのデザインにも活用できたり、グルメ情報サイトにも登録ができたり、インバウンド関連全般に活用の幅が広かったのが魅力的でした」と語るアリ代表。

日本語がわからない方がお店の存在を知り、さらに来店後はストレスなくメニューを選んでいただけるよう、アリ代表は英語版のWEBサイト構築とお店の看板やメニューの説明文に英語表記を追加することを決めた。また、お店の認知度をさらに上げるため、ハラール料理専門の情報サイトに登録も行った。

Mashalの日本語版WEBサイトは文字数が多く、全てを翻訳することが難しかったため、アリ代表は別に英語版のサイトを作成することとした。

<概算費用>

総事業費:79万円 
そのうち補助金:約40万円

<補助金・事業の活用スケジュール>

申請:2023年12月
交付決定:2024年3月
実績報告書:2024年8月
額決定:2024年10月
補助金受取:2024年11月

<効果>
ハラールフード取り扱いの店に入り、ホッとしたお客様の笑顔を見ることが喜び

合同会社Mashal アリ 三貴子 共同代表

フセイン氏の味を求め、Mashalには現在多くのお客様が訪れている。「英語版のWEBサイトを公開してから実感として外国人のお客様が増えています」とアリ代表。

インドからの旅行客はもちろんのこと、最近はヨーロッパ、韓国、中国のお客様の来店も増えているとのこと。英語版WEBサイトが存在することでお客様に安心感を与え、メニューの説明にも英語表記があるのでお客様自身がじっくりとメニューを選ぶことができる。

「お店に辿り着いたイスラム教徒やベジタリアンの皆様、日本で何を食べていいかわからず困っていたので、席に着いた瞬間ホッとした顔をされているんですよ」と笑顔を見せるアリ代表。

大森エリアは羽田空港まで電車を使えば30分あまりで行ける立地で、ホテルも多くあることからインバウンド旅行客の多くがここを訪れている。

「お店をもっと周知して大森エリアへもっともっと多くのインバウンド旅行客の方に来ていただきたい」と熱い想いを語るアリ代表。

シェフの味を守るとともに、多くの方に安心して日本旅行を楽しんでほしいという想いを持ち、これからもお店の発展に尽力すると締めくくった。