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チェックイン・チェックアウトを多言語対応し、“より”温もりある接客にシフトして顧客満足度も向上
~株式会社東横インのインバウンド対策とサービス品質向上の両立の取り組み

活用した支援メニュー(最新版)
インバウンド対応力強化支援事業(令和7年度)

事業者情報

企業名
株式会社東横イン(東横イン21施設)
所在地
東京都大田区新蒲田1-7-4
HP
羽田空港からほど近く、東京の玄関口に位置する「東横INN大森」

46都道府県に338店舗(2024年12月末時点)のビジネスホテルを運営する(株)東横イン。駅前に降り立ち視線をあげると「東横イン」の文字が目に入ることも多い。ビジネスや推し活などの拠点として、多くの人が利用する。朝ごはんの無料提供や、安心安全に利用できる施設整備、地域との共生などに注力し、利用者の活力をチャージできるような施策に取り組んでいる。

一方、担い手が減少する中、効率的なオペレーションはビジネスホテルにとって不可欠だ。顧客満足度の向上を追及した多言語対応自動チェックイン機導入の取り組みについて、東横INN大森の朝原理恵子支配人、株式会社東横インの店舗サポート本部 業務支援部の徳田泰子部長補佐の2名にお話を伺った。

<補助金・事業を利用したきっかけ>
人手不足対策と接客品質向上へ。多言語対応自動チェックイン機導入で挑む

「多言語対応自動チェックイン機のメーカーにヒアリングをし、助成金や補助金の情報を得ていました」と徳田部長補佐は振り返る

ホテル業界に限らず、日本ではさまざまな業界にて人手不足の課題を抱えている。東横INNも例外ではなく、チェックイン・チェックアウトの業務面で複数の課題を抱えており、スタッフの接客品質の均質化や教育面の標準化が必要だった。

インバウンドの増加による稼働率の上昇に加え、チェックイン・チェックアウト時の外国語での対応は、時間もかかり行列が発生。急ぐお客さまをお待たせしていた。逼迫したカウンターの内部では、釣り銭ミスや請求書の計算ミスなどが発生し、トラブルが誘発されていた。

「東横INNでは、カウンター越しの対面接客で、チェックイン・チェックアウトの対応と宿泊料の金銭授受のすべてをスタッフが行っていました。今後の採用難を考えると、経験が浅いスタッフでもミスが起きない仕組みが必要でした。さらに外国語対応の標準化や、お待たせしてしまう時間の削減も必須でした」と徳田部長補佐は話す。

<補助金・事業を活用した取り組み>
多言語対応自動チェックイン機導入で“おもてなし”と業務効率化を実現

自動チェックイン機は多言語化している。インバウンド対応も強化
多言語対応自動チェックイン機を導入したことで、空いた時間をお客様への声掛けや見送りに費やして、接客サービスが以前より向上した

自動チェックイン機の導入は2021年に試験的にスタート。740室を擁する大型拠点の東横INN品川港南口天王洲アイルと、東横INN新横浜駅前本館に導入された。金銭授受のミスの減少や、お客さまへの案内がわかりやすいなどの効果が確認され、現在では338の全店舗(2024年12月末時点、国内のみ)に展開されることになった。

一方、当初は接客面での懸念があったという。
「常連のお客さまも多い中、現場では自動化による無人化で、お客さまとの接点やふれあいが失われることを懸念していました。東横インの強みである人の温かみ、いわゆる “おもてなし”の良さがなくなってしまうのではと。本社からは“おもてなし”の大切さを求められていたので、両立する方法が分かりませんでした」と朝原支配人は話す。

こうした課題は、カウンターの中にいたフロントスタッフが、カウンターの外に出ることで解決した。アテンダントとして、お客さまとのふれあいを保ちつつ、一人ずつ多言語対応自動チェックイン機に導き、声がけをしながら利用を見届けエレベータまで送るようにオペレーションを変更した。経済産業省が創設した「おもてなし規格認証」(※)を取得し、“おもてなし”を大切にしながらも、東横INNは人と機械の役割の線引きを変えた。

(※)出典:【経済産業省】「おもてなし規格認証」 のご案内
https://www.zengakkyo.com/password/meti/087_meti_info20161004/index.html
(※)おもてなし規格認証の詳細はこちら
https://omotenashi-jsq.org/

<概算費用>

総事業費:1億7,424万円
そのうち補助金(交付決定額):6,300万円

<補助金・事業の活用 スケジュール>

申請:2023年2月
交付決定:2023年5月
実績報告書:2023年12月
額確定:2024年2月中旬
補助金受取:2024年2月下旬

<効果>
自動化と手厚い“おもてなし”の両立へ

東横INN大森 朝原 理恵子 支配人(右)と、フロントスタッフのパウデル氏(左)と川畑氏(中央)

多言語対応自動チェックイン機の導入によってどのような効果が生まれたのだろうか。朝原支配人はこのように話す。

「当初、自動化と“おもてなし”は相反すると考えていました。しかし考え方を変えて、機械ができることは機械が行うようにしました。一方で、人にしかできない“おもてなし”の役割はスタッフが担うようにしました。
お出迎え、操作の声かけ、会員になるための声かけなど、サービス面で手厚いサポートができるようになり、結果的にお一人のお客さまと接する時間は増えました。またお客様からも『自国語で操作ができて便利』と好評です」。

カウンターの内側から外側に出たスタッフの接客によって、手厚い“おもてなし”が実現し目配りできる範囲も広がった。これまで電卓を叩いて計算していた宿泊料の精算も、機械が行うことで計算ミスが減った。現場では業務標準化による精神的な安心感が増え笑顔での対応ができるようになったそうだ。自動チェックイン機は多言語対応なので、外国語が話せないスタッフも自信をもって対応ができる効果も大きいという。

「自動化は、冷たい接客になるのではないだろうか。」当初の懸念を、新しい“おもてなし”のスタイルに変化させた東横INN。補助金を活用した多言語対応自動チェックイン機は徐々に業務に浸透し、現在は8~9割程度の使用率へと向上。東横INNでは、多言語対応自動チェックイン機の導入をしたことで、あらゆる国からのお客様をおもてなしできる環境が整い、国内外からのゲストに対して“より”温もりのある接客を目指し、進化を続けている。