宿泊施設デジタルシフト応援事業補助金を利用した目的は、業務効率とサービス品質の向上だ。同ホテルではチェックイン時の精算業務に課題を抱えていた。
同ホテルの今井有紀リーダーは、「フロント業務で何よりも大切なことは、お客様のご利用料金の計算を間違わないことと、お釣りを渡し間違えないことです。しかし、自動釣り銭システムの導入前は電卓で料金計算を行い、釣り銭機の両替機能を使って釣り銭を用意していました。こうした極めてアナログな対応によってさまざまなミスが発生していました。更にミスに伴い付帯的な業務も発生し、現場の負担となっていました」と話す。
具体的な例として、スタッフが硬貨を誤認して釣り銭を渡し間違えたり、お客様のポイント利用が考慮されずに精算されたりしてしまうケースがあった。こうした場合、チェックアウトまでの限られた時間内にお客様に連絡し、ときには差額を部屋までお届けすることもあったという。
また、同ホテルではデイユースのサービスも提供していることから、宿泊とデイユースの売り上げが混在しないように別々に管理する必要があった。宿泊のお客様のチェックアウトの時間帯や売り上げの締め処理の時間、デイユースのお客様のチェックインの時間帯が重なることもあり、フロントにおける精算業務は複雑化し、スタッフにはストレスが発生していた。
1件の釣り銭間違いから波及して、問題が解決するまでスタッフの時間を拘束し、精算業務の負担が続くことが大きな課題となっていた。
事例紹介
自動釣り銭システムの導入により業務効率とサービス品質の向上を実現
~デジタル化でフロント前のお客様の待ち時間が半減
- 活用した支援メニュー(最新版)
- 観光関連事業者デジタルシフト応援事業(令和7年度)
事業者情報
- 企業名
- 株式会社Stay Factory(ホテルヒラリーズ赤坂)
- 所在地
- 東京都港区赤坂3丁目12-5
- HP
- https://www.hotel-hillarys.com/akasaka/

東京のビジネス街の中心である港区赤坂。ホテルヒラリーズ赤坂は、「MIXTURE」をテーマに、和×未来が融合したデザインで上質なステイを提案する新しいスタイルのホテルだ。
東京メトロ千代田線「赤坂」駅から徒歩約2分の場所に位置し、東京メトロ銀座・丸ノ内線「赤坂見附」駅まで徒歩約5分、「東京」駅まで地下鉄で約15分とアクセスに優れる。インバウンドの旅行客だけではなく、ビジネスユースや受験を控えた親子のお客様にも利用されている。宿泊に加えてデイユースのサービスもあり、テレワークでの利用も多いという。
同ホテルの客室数は167室。シングルルームやデラックスダブルルーム、車椅子やご年配のお客様もくつろげるユニバーサルルームまで5つのタイプの部屋を用意している。都心にありながら大浴場も備えた同ホテルは、利便性と快適性を求めるお客様に好評だ。
<補助金・事業を利用したきっかけ>
釣り銭処理に起因した精算ミスの削減と業務効率化が課題に

<補助金・事業を活用した取り組み>
自動釣り銭システムを導入し、釣り銭処理の正確性と業務効率を改善

同ホテルが宿泊施設デジタルシフト応援事業補助金を活用した目的は、ホテルフロントの業務効率の改善及びサービス品質の向上だ。そのため、当補助金を活用し、自動釣り銭システムを導入することによって、釣り銭処理の正確性と、業務効率の向上が図られることとなった。
さらには、自動釣り銭システムと連動した釣り銭機2台をフロント内に設置した。また、ホテル予約システムとも連携し、お客様ごとに異なる宿泊やデイユースの利用料金、ポイントの利用有無を釣り銭処理に反映させた。これまでスタッフが手計算していた料金計算を自動化している。
今回の取り組みは、補助金の申請経験や知見がある社員が対応することで、スピーディーに自動釣り銭システムの導入まで進めることができたという。
<概算費用>
総事業費275万円 そのうち補助金150万円
<補助金・事業の活用 スケジュール>
申請:2023年7月
交付決定:2023年8月
実績報告書:2023年12月
額確定:2024年1月上旬
補助金受取:2024年1月中旬
<効果>
お客様に対するサービス向上と社内業務の効率アップを実現

自動釣り銭システムの導入効果については、2つの面がある。
まず、1つ目のお客様に対する側面として、チェックインするお客様をフロント前でお待たせする時間が半減した。
お客様のチェックインは同じ時間帯に集中しがちだ。導入前はお客様1組あたり約5分を要していたチェックインが、導入後は約2〜3分で対応できるようになったという。また、釣り銭の間違いがなくなることで、リカバリー対応でお客様の貴重な時間を割いてしまうことも減少した。
2つ目は社内業務に対する側面だ。釣り銭間違い発生に由来するさまざまな社内対応や、スタッフ間の申し渡し、新人スタッフへの釣り銭対応の教育時間などを削減することができた。売り上げを簡単に集計できるようになった効果も大きい。
釣り銭処理から解放されたスタッフに気持ちのゆとりが生まれ、笑顔が増えたことは特に大きなメリットだ。ホスピタリティーを提供するホテルでは、フロントのスタッフの笑顔が訪れるお客様への顔にもなる。
デジタルシフトによって、新たな価値も生まれたそうだ。「業務効率が向上してスタッフにゆとりが生まれました。そのためか、ホテルが多く競争率が高い赤坂エリアにおいて好評価を得られるようになり、スタッフのモチベーションもアップしています」と、今井リーダーは笑顔いっぱいに話す。