同施設は豊洲市場に隣接し、東京都や江東区などの行政・自治体とも連携しながら、街づくりや地域活性化、さらにはインバウンド需要の拡大を目指している注目のスポットだ。
計画段階で、すでに日本人観光客はもとより、訪日外国人観光客が多く訪れることが予想されていたことから、施設全体の防災対策と多言語対応が喫緊の課題であった。それらの課題解決のため、施設内20か所に多言語対応の防災システムを搭載したデジタルサイネージを設置する計画を立てた。
デジタルサイネージの設置事業者との打ち合わせのなかで、デジタルサイネージを活用したアラートマーカー導入の提案を受けた。アラートマーカーとは、災害時にお客様や社員の命を守る「防災・減災・緊急」情報の自動配信をするための装置だ。
施設内のデジタルサイネージに災害情報を自動配信できるように専用システムを導入することで、地震や台風などの災害が発生した際に、有事情報を自動的に配信できるようになる。また多言語対応も可能なことから、日本人観光客だけでなく訪日外国人観光客にも災害情報が行き届く。
「アラートマーカーの公共性、正確な情報が自動で配信される点に魅力を感じました」と、万葉倶楽部株式会社新規開発事業部の高橋眞己取締役副社長は振り返る。
災害時、同施設では大勢の帰宅困難者の発生、携帯電話などの通信網の混乱、道路や鉄道の寸断に伴い、災害拠点としての役割などが見込まれている。そのような時の情報発信拠点として、アラートマーカーの導入を前向きに考えていたが、導入費用の面では検討が必要であった。検討段階で東京観光産業ワンストップ支援センターのホームページを見つけ、「インバウンド対応力強化支援補助金」の存在を知り、この補助金を活用することで負担が軽減されることから実施に踏み切った。
事例紹介
デジタルサイネージで豊洲エリアの魅力と防災情報をリアルタイム配信
~世界中の観光客を迎える
- 活用した支援メニュー(最新版)
- インバウンド対応力強化支援事業(令和7年度)
事業者情報
- 企業名
- 万葉俱楽部株式会社(豊洲 千客万来)
- 所在地
- 東京都江東区豊洲6丁目5番1号
- HP
- https://www.toyosu-senkyakubanrai.jp/

豊洲市場に隣接する「豊洲 千客万来」は、2024年2月にグランドオープンした東京の新しいランドマークである。「豊洲場外 江戸前市場」と名付けられた食楽棟と、温浴棟の「東京豊洲 万葉倶楽部」の二つの施設で構成されている。
食楽棟「豊洲場外 江戸前市場」は、江戸の街並みを再現した商業施設で、豊洲市場に隣接した強みを活かし、新鮮食材の販売・提供を行っている。寿司やうなぎなどの江戸前の食事が楽しめるほか、海外に向けた東京の食の発信拠点としての役割も担う。
また、温浴棟「東京豊洲 万葉倶楽部」では、箱根・湯河原の温泉をトレーラーで運搬して、豊洲の地に「東京都心の温泉郷」を実現。連日、多くの観光客で賑わっている。
<補助金・事業を利用したきっかけ>
デジタルサイネージの多言語対応と防災対策が課題に

<補助金・事業を活用した取り組み>
施設内20か所、人の動線に沿う場所に多言語対応のデジタルサイネージを設置


本補助金は、訪都外国人旅行者のニーズに対応した利便性や快適性の向上が目的だ。そのため、デジタルサイネージでは、多言語対応で、観光客向けに施設の情報発信を行うとともに、隣接している豊洲市場の案内も流し、豊洲エリア全体の活性化を狙っている。
同時に、訪日外国人に対する安心・安全の確保に寄与することを目的とし、日本特有の地震や台風などの自然災害の多さにも対応できるように、災害が発生した際は災害コンテンツガイドラインに沿った災害情報を自動配信する。
同施設では本補助金を活用して、デジタルサイネージのモニターとアラートマーカーを施設内20か所に導入した。エレベーターホールなど観光客や従業員の動線に沿う場所のほか、「東京豊洲 万葉倶楽部」のメインコンテンツのひとつ、360度のパノラマが楽しめる展望足湯庭園など、人が集まり目に留まりやすい場所にも設置した。
同施設では、年に数回、防災訓練も実施している。施設全体の防災意識向上への足掛かりとして、デジタルサイネージが一役買っている。
<概算費用>
総事業費1,178万円 そのうち補助金 300万円
<補助金・事業の活用 スケジュール>
申請:2023年3月
交付決定:2023年5月
変更申請:2023年9月
実績報告書:2024年2月
額確定:2024年3月
補助金受取:2024年4月
<効果>
豊洲市場の魅力を伝え、防災情報もリアルタイムで配信。防災意識向上へ

高橋 眞己 取締役副社長
現在、デジタルサイネージでは、同施設の魅力を発信する動画コンテンツを放映している。英字幕付きの動画を配信することで、訪日外国人観光客にも施設情報や施設コンセプトが人を介さずとも伝わりやすいと評判だ。
また、デジタルサイネージの配信コンテンツを管理する面でも効率的で生産性が高いという。その理由は、クラウド経由で配信コンテンツを差し替えることができ、複数のモニターでも操作は1か所で済むため、人手や手間がかからず伝えたい情報がリアルタイムで配信することができる。
「防災という面では、何も起きずにアラートマーカーを使わないことが一番ですが、備えは必要です。観光客が多く集まるところですから、東京観光スポットの代表選手のような気持ちで、最大限、防災対策に取り組んでまいります」と高橋眞己取締役副社長は締めくくった。