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米国発の自転車で伊豆大島を丸ごと楽しむアドベンチャーツーリズム開発
〜電動アシスト自転車とWEBサイトやロゴマークなど広報ツールを導入

活用した支援メニュー(最新版)
多摩・島しょアドベンチャーツーリズム推進事業助成金(令和7年度)第2回

事業者情報

企業名
御神火サイクル
所在地
東京都大島町元町2丁目17-8ハリカ大島店1F
HP

世界的な自然志向・健康志向・サステナブル意識の高まりを受け、「自然」「アクティビティ」「文化体験」のうち2以上の要素で構成され、旅行者が地域独自の自然や文化を体験できる「アドベンチャーツーリズム」が注目されている。東京の伊豆大島でも、アドベンチャーツーリズムの新たな取り組みが始まっている。

伊豆大島の海の玄関口のひとつ、元町港近くで御神火サイクルを営む髙木巌氏は、1928年に創業された飲食店「御神火茶屋」の5代目にあたる。コロナ禍を経て、先祖代々の家業であった同店が経営上の窮地に追い込まれたことをきっかけに、2022年に御神火茶屋を承継。新規事業として、島の自然と文化を楽しむアドベンチャーツーリズムを提供する自転車レンタルサービスをスタートさせた。

起伏に富んだ火山島の伊豆大島を存分に楽しめる自転車として髙木氏が選んだのは、アメリカ・カリフォルニア州発の電動アシスト自転車「SUPER73」。髙木氏は、事業を本格化させるにあたり「多摩・島しょアドベンチャーツーリズム推進事業助成金」を活用。13台のSUPER73を導入し、島内を走る10のモデルコースを策定。また、ロゴマークやイメージ動画などの広報ツールを作成、予約機能を備えたWEBサイトを開設して受け入れ体制を整えた。

<補助金・事業を利用したきっかけ>
コロナ禍で傾きかけた家業を承継。日米間の為替変動と費用増加に翻弄される新事業

三原山の開拓者であった先祖が始めた御神火茶屋を2022年に承継した髙木氏は、コロナ禍の影響から経営上の窮地に追い込まれた商いを立て直すべく、時代に合った新しい事業の必要性を考えていた。夏場のマリンアクティビティが人気の伊豆大島では、陸を楽しむアクティビティはまだまだ開拓の余地がありそうであった。伊豆大島は、日本に数少ない玄武岩の活火山で、火山噴出物と水のせめぎあいによって形成された海岸線など島火山ならではの独自性が評価され、「伊豆大島ジオパーク」として日本ジオパーク委員会の認定を受けている。夏以外にも通年楽しむことができ、伊豆大島の地形や地質、火山と共に歩んできた島の素朴な文化を五感で楽しむような観光を提供したい。そのような思いを持ち、髙木氏が注目したのが、電動アシスト自転車「SUPER73」であった。

まずは個性的な見た目に惹きつけられた。1970年代にカリフォルニアで流行したミニバイクから着想を得たフレームに、パワフルな電動モーターと極太のタイヤ。舗装路からオフロードまで安定して走行できる姿が、伊豆大島の景観にぴったりだと感じた。

1台購入して試してみると、やはり安定感があり山道の曲折も快適にコーナリングできた。起伏に富んだ島の地形や「裏砂漠」などの火山灰をものともせず力強く走り回ることができるこの自転車は、髙木氏が思い描く観光体験に最適だと確信した。一方で、円安を背景に車体の購入価格は急上昇。事業を本格化させるにあたって、購入コストの増大が壁となった。

また、一人で事業を切り盛りできるよう、ネット予約機能を備えたWEBサイトも開設して業務を効率化したいが、自転車の購入費用がかさむ中で必要な資金を用意できるか、髙木氏は頭を悩ませていた。

そのような矢先、髙木氏は東京観光財団のWEBサイトで「多摩・島しょアドベンチャーツーリズム推進事業助成金」を発見し、伊豆大島で地元金融機関と東京観光産業ワンストップ支援センターが開催した補助金説明会に参加した。補助金申請にあたっては東京観光財団のアドバイスやサポートが力になったという。

「他の地域の事例も紹介しながら、細やかにサポートしていただいた。事業計画を練りながら夢を具現化させていくプロセスを経て、自信を持って事業に取り組むための芯が得られました」と、髙木氏は振り返る。2023年、同補助金を活用し、髙木氏は事業本格化に向けた一歩を踏み出した。

伊豆大島の玄関口のひとつ、元町港近くに位置する御神火サイクル
「バームクーヘン」の愛称で親しまれている地層の断面

<補助金・事業を活用した取り組み>
大島の壮大な自然を五感で楽しむサイクリングツアー。オンライン予約可能なサイトも整備

電動アシスト自転車で島の自然と文化を楽しむアドベンチャーツーリズムを開発

活用した補助金の使途は約8割が電動アシスト自転車の購入費。子どもや小柄な人向けの小型1台と、バッテリーサイズの異なる中距離用・長距離用の計13台を新たに購入。残る約2割でロゴマークのデザインや予約機能を備えたWEBサイトの制作など、事業を本格化させるための広報ツールを整備した。

また、三原山の景観を楽しむ登山道コースや、火山灰が堆積した「裏砂漠」を探検するコース、ノスタルジックな港町を訪れる波浮港コースなど、伊豆大島の多彩な魅力を楽しめるツアーコース案を策定。2024年3月に伊豆大島在住の30名を対象としたモニターツアーを実施した。
モニターツアーの参加者からは「電動アシストがあって坂道もスムーズでした。自転車ならではの速度で楽しめるのが魅力」「自転車だから行ける小道なども多く、車では味わえない体験ができた」と好評を得た。

また、アンケート結果などから磨き上げた10種類のツアーコースを記載したオリジナルマップを作成した。自転車をレンタルする顧客にマップを使って島の自然や文化などを説明し、顧客がマップを元に伊豆大島のアドベンチャーツーリズムを自由に楽しんでもらえるようにした。

様々な準備を経て新規事業の枠組みが整った。店舗に13台の「SUPER73」が並び、2024年4月に御神火サイクルとして事業を本格スタートさせた。

カリフォルニア発の電動アシスト自転車「SUPER73」13台を購入
イメージ動画や写真を掲載し予約機能を備えたWEBサイトを開設
火山灰が堆積した「裏砂漠」を探検するコースなど全10コースを策定

<概算費用>

総事業費:約1,017万円 
そのうち補助金約581万円

<補助金・事業の活用スケジュール>

申請:2023年7月
交付決定:2023年10月
実績報告書:2024年11月
額確定:2025年1月
補助金受取:2025年2月

<効果>
島内各地に自転車を楽しむ観光客の姿。問い合わせも増加中

御神火サイクル 髙木 巌 氏

サービス提供を開始して約1年半。徐々に認知度が高まり、伊豆大島の各地で「SUPER73」で走行する利用者の姿が見られるようになった。国内旅行者はもちろんのこと、訪日外国人旅行者からの問い合わせや利用も徐々に増えてきているという。
また、髙木氏は、島内に不慣れな観光客にも安全に楽しんでもらえるよう安全対策に力を入れてきた。ヘルメットの貸し出し、交通ルールの説明、曲折が多い島の道路を走行する際の注意点。島内の医療機関で間に合わないような大怪我をした場合、本土と橋で結ばれていない離島では命に関わることもあり得ると真剣に伝える。自転車のメンテナンスも適切に行い、常に1台〜3台を整備しながら残りの台数で稼働させている。その甲斐あって、現在まで無事故で運営してきたと、髙木氏は胸を張る。

「一見筆の穂先のような形をしたただの岩に見えて、実は筆島火山の火道にあった硬い火道角礫岩が長い間波に洗われてできた『筆島』など、伊豆大島には知識を得ることで面白くなる見どころも多いんです」と、髙木氏。今後は地元の自然ガイドと連携しながら、四季ごとに島の自然を楽しめるガイド付きツアーの提供も視野に入れる。

「自転車は免許も要らない。排気もない。島の中に身を置いて、自分のペースで走りながら感じる発見を五感で楽しんでいただきたい」と、髙木氏。伊豆大島独自のアドベンチャーツーリズムを深め、事業を通じて大好きなふるさとに笑顔の人があふれ、賑わいが生まれることを願う髙木氏の、これからに注目したい。