平野代表が新規事業の開拓に至ったきっかけは、多くの観光事業者が休業を余儀なくされたコロナ禍だった。ポストコロナを見越したアイデアを練る中、沖縄で体験したパラセーリングの導入を思いついた。
空港のない小笠原諸島では、島の景観を空から臨むことができない。パラセーリングであれば、世界自然遺産に登録される雄大な自然を空から楽しむことができる。「海山を含めた島の景観を楽しんで頂ける、良いアクティビティになると思いました」と平野代表。
島全体の観光を魅力化できるよう新規事業を推進する中、課題に感じたのは「認知度」だった。それまで小笠原に存在しなかった新しい観光メニューだけに、観光客はもとより島内での認知度向上にも努める必要があったのだ。
そこで、小笠原の環境を存分に活かしたパラセーリングの魅力を広報するにはどうすればよいか、集客へと繋げる方策を東京都商工会連合会経由でアドバイザーに相談しながら、具体策を練り、「アドバイザーを活用した観光事業者支援事業補助金」を申請することとなった。
事例紹介
小笠原の自然を空から体験するパラセーリング事業誕生
~体験動画やノベルティが認知度UPと集客に貢献
- 活用した支援メニュー(最新版)
- アドバイザーを活用した観光関連事業者支援事業 (令和7年度)
事業者情報
- 企業名
- ボニンエアー
- 所在地
- 東京都小笠原村父島字清瀬10-2
- HP
- https://parasail.tokyo/

ボニンエアー平野悠介代表は、与那国島でのダイビングショップ勤務や、沖縄本島でシステムエンジニアをしながらの週末ダイバー経験を経て起業を志し、2010年小笠原村に移住。2016年にボニンエアーを開業し、ダイビング用エアタンクチャージの事業を営んでいる。
平野代表は、コロナ禍で休業を余儀なくされた期間にポストコロナを見据えたパラセーリング事業を企画。2022年9月、「アドバイザーを活用した観光事業者支援事業補助金」を活用し、パラセーリングと小笠原の魅力を伝える動画5本とパラセーリングサービスを提供する父島パラセールのロゴを使用したアクリルスタンド1,000個を制作。集客の基盤を整えた。
<補助金・事業を利用したきっかけ>
これまでにないサービスをどう伝えるか アドバイザーの指南を受けて動画制作へ


<補助金・事業を活用した取り組み>
動画を活用しコロナ期間に地元向けの体験試乗を呼びかけ 認知向上の突破口に
動画制作などの情報発信に長けたアドバイザーとパラセーリングの認知度を高めるための広報戦略を相談する中で、小笠原観光とパラセーリングの魅力を伝える動画制作や、公式サイトやSNSからの拡散、二次元コードを使って来店を促す魅力的なノベルティの配布など、ネットを活用した情報発信基盤を整えることになった。
動画では、空から小笠原の自然を楽しむパラセーリングツアーの魅力や小笠原の風景を、臨場感たっぷりに紹介。また、ツアーの流れを説明するものや訪日観光客へ向けた英語版など、用途に合わせ5本の動画を制作した。
加えて「パラセーリングサービスを提供する父島パラセールのロゴを使用したアクリルスタンド」を1,000個制作し、二次元コードから公式サイトにアクセスできる仕掛けとし、島内の飲食店や宿泊施設約70箇所に配布。地域内への広報を叶えるとともに、リピートや口コミ集客を狙った。
また、事業のスタート前には、地元住民を対象にしたパラセーリングの体験試乗も実施。アドバイザーが自ら試乗する様子を動画に撮影し、SNSで公開すると地元住民が反応。体験者からの口コミが観光客に伝わり、開業後のスムーズな来店に繋がった。


<概算費用>
総事業費 約280万円 そのうち補助金 約191万円
<補助金・事業の活用スケジュール>
申請:2022年9月
交付決定:2022年10月
実績報告書:2023年10月末
額確定:2023年12月
補助金受取:2024年1月
<効果>
店頭で目を惹くデジタルサイネージとリピートや口コミを呼ぶノベルティで集客 顧客満足度を高める新たなステップへ

小笠原諸島初のパラセーリング事業は顧客にも好評。平野代表は「小笠原の魅力を体感して頂ける素晴らしいアクティビティができた」と胸を張る。
制作した動画は、公式サイトやSNSを通じて世界に向けて配信。島内では、父島の表通りに面した店頭のデジタルサイネージから常時配信し、集客に繋げるツールとして活用している。
島内の飲食店や宿泊施設に配布したアクリルスタンドは、各施設を通じて大学のサークルなどにも配布。スタンドに印刷された二次元コードは、新たなお問い合わせや来店者を招く鍵となった。「今回動画やノベルティを使って、島内の認知度を高められたのが大きかったです。初期は特に、地元の方からの口コミが集客のはずみになりました」と平野代表は喜ぶ。
パラセーリング事業が軌道に乗ったボニンエアーでは、新たなステップを計画中。「小笠原のダイビングツアーは、弁当持参で丸一日かけてのツアーが主流の為、島内に昼食を出す店が少ない。今後はパラセーリングなどのショートツアー利用者向けにランチ提供もしていきたい」と平野代表。2024年度内に飲食事業を立ち上げるべく、準備している。