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ホテル客室ユニットバスに節水システム導入
~SDGs配慮をPR 環境意識高い旅行者へも訴求

活用した支援メニュー(最新版)
観光事業者による環境対策促進事業(令和6年度)

事業者情報

企業名
上野シティホテル株式会社(上野ファーストシティホテル)
所在地
東京都台東区上野1-14-8
HP
上野ファーストシティホテルの外観

 上野ファーストシティホテルは、徒歩5分圏内に5路線5つの駅がある利便性から、観光やビジネスの拠点として人気を集める。同ホテルは2023年、「観光事業者による環境対策促進事業補助金」を活用し、77ある客室の水栓に節水システムを導入した。

<補助金・事業を利用したきっかけ>
宿泊業にもサステナビリティの気運 対策が急務に

 観光客の環境意識の高まりによって、ホテル・旅館業界では近年、環境対策への気運が急速に高まっている。特に感度の高い欧米の観光客は「サステナビリティに配慮しているかどうか」を宿泊先として選ぶ指標の一つに位置付けており、訪日外国人に人気の大手宿泊予約サイトでは環境対策の度合いを3段階で評価・格付けするなど、その比重は無視できない大きさだ。また、2022年春以降は、使い捨てプラスチック削減を目指す「プラスチック資源循環促進法」の施行によってアメニティの無料配布が制限されるなど、業界全体が従来サービスの見直しを迫られている。
 こうした動きを受けて2023年5月、東京都及び東京観光財団において、節水やペーパーレス化などの環境対策に対し「観光事業者による環境対策促進事業補助金」が新設された。同ホテルの則竹俊幸代表取締役社長は、日頃から東京観光財団の事業を利用しており、同補助金が新設された直後にその存在を知ったという。それまでも連泊時のリネン交換回数を減らしたり、照明をLED化したりといった形で環境対策に取り組んできたが、コロナ禍を経て外国人宿泊客が急増する中、更なる取り組みの必要性を感じていたことから、新たに環境対策に関する計画を策定し、客室に節水システムを導入することを決めた。水だけでなくガスの使用量も削減でき、脱炭素にも貢献できると考え、同年7月に申請した。

<補助金・事業を活用した取り組み>
吐水量を抑えながら水圧キープ 自社サイトでPRも

シャワーの吐水に空気を含ませて水量を抑えるパーツ
シャワーヘッドも交換して使用感をキープ
蛇口からの流水量を制限するパーツ

 客室のユニットバスには、浴室用と洗面台、2カ所の水栓がある。浴室用の既存の水栓には、シャワーの吐水に空気を含ませて水量を抑える専用パーツを取り付けた。節水によって使用感や肌当たりを損なわないよう、シャワーヘッドも節水仕様のものに変更して水圧をキープ。また、洗面台の蛇口先端には、流水量を制限する弁を取り付けた。
 則竹代表によると、節水システムは以前にも他製品を導入したものの目詰まりを起こすなどの不具合が多く、結局取り外してしまったという経緯があったため導入には慎重だったというが、今回導入したものは不具合があった際のメンテナンス体制が充実していることや、同業者からの評判が好意的だったことから、導入に踏み切った。2023年9月中旬から下旬にかけて、数回にわたって設置工事を実施。77の客室のほか、レストランなどの館内設備の水栓にも導入した。
 同補助金は観光客誘致に向けて、取り組みを国内外へPRすることも要件の一つになっている。同ホテルでは、日本語のほか英語・中国語(繁体字・簡体字)・韓国語の計5言語で展開している自社サイトのトップページに、節水システムを導入したことを掲載。環境対策を格付けする大手宿泊予約サイトにも掲載した。

<概算費用>

総事業費約165万円  そのうち補助金約100万円

<補助金・事業の活用スケジュール>

申請:2023年7月
交付決定:2023年8月
実績報告提出:2023年10月
額確定:2023年12月
補助金受取:2024年1月予定

<効果>
吐水量3割減の見込み 導入PRで誘客効果に期待

上野ファーストシティホテル
則竹 俊幸 代表取締役社長

 節水システム導入によって、シャワーや水道を一定時間出し続けた場合の吐水量は従来よりも3割ほど削減できる見込みだ。客室の稼働率が昨年と比較して大きく回復しているため、総使用量だけを単純に比較することは難しいが、則竹代表はその効果に期待を寄せる。水道代やガス代が削減できることもメリットの一つだ。則竹代表は「物価高騰が続く中、固定費が圧縮できることはありがたい」と話す。
 円安の追い風も受け、日本を訪れる外国人の数は急増している。同ホテルでも、2023年12月時点ではゲストの3~4割を外国人宿泊客が占めるようになった。今後は、アメニティを竹材に変更したり、必要なアメニティだけをピックアップしてもらう選択式に切り替えたりといった取り組みも進めていく方針。感度の高い旅行者にも訴求するよう、リニューアルを予定している自社サイトやSNSなどでも環境対策を分かりやすく発信していくという。