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伝統工芸品を展示販売するショーケース設置
~「モノづくりの街」PRへ

活用した支援メニュー(最新版)
宿泊施設活用促進補助金

事業者情報

企業名
日暮里ホテルマネジメント合同会社(アートホテル日暮里ラングウッド)
所在地
東京都荒川区東日暮里5-50-5
HP
ロビーに設置されたショーケース

 JR、京成電鉄、日暮里・舎人ライナーが乗り入れる日暮里駅から徒歩すぐの場所に位置するアートホテル日暮里ラングウッド。地上14階、地下1階建てで、荒川区内のホテルでは最大となる128の客室数を誇る。
 同ホテルを運営する日暮里ホテルマネジメント合同会社は2022年、「宿泊施設活用促進補助金」を活用し、区内で製造される伝統工芸品などを展示販売するショーケースを1階ロビーに設置した。

<補助金・事業を利用したきっかけ>
地域を代表するホテルとして 「モノづくりの街」の魅力発信へ

荒川区の伝統工芸品「犬張子」

 同ホテルがある荒川区は、隅田川沿いを中心に衣服や皮革などの工房が集中し「モノづくりの街」として発展してきた。指物や銀器といった伝統工芸品の職人も多く、同区は「荒川マイスター」として認定し、伝統工芸品の普及を後押ししている。また、路面電車「東京さくらトラム」が走るなど下町風情が残り、地域内の交流も盛んだ。
 同ホテルも、地元に密着したホテルとして30年余りの歴史を刻んできた。4、5階には同区所管の「日暮里サニーホール」が入るほか、例年8月末に日暮里駅前で数日間にわたり開催される納涼盆踊りの休憩所として使われるなど、宿泊客以外の地域住民が訪れる機会も多く、身近な存在として愛されている。
 築35年を迎えるのを前に、同ホテルは2021年から館内のリニューアル工事を順次進めてきた。2022年にはその一環として、1階ロビーの改装を始めることになった。同ホテルの本村幸子・宿泊マネージャーによると、館内に区営ホールがあり、普段から緊密に連携している同区との共通認識として「地域を代表するホテルとして、情報発信基地の役割も担っている」との思いが背景にあるという。ロビーではもともと幅2mほどのショーケースに数点の伝統工芸品を飾っていたが、さらに多くの作品を展示できるようにする案が浮上。さらに、スポットライトを当てて作品を際立たせ、販売もできるようにすることで、同区の魅力をより効果的にPRすることにした。
 活用できる補助金を探したところ、2022年5月ごろに「宿泊施設活用促進補助金」を知った。「荒川マイスター」たちの作品を展示販売するための設備工事について、補助対象事業の一項目である「宿泊を通じて東京の魅力を発信するための事業」として、6月に申請した。

<補助金・事業を活用した取り組み>
ギャラリーのように魅力的に ショーケースは大小織り交ぜメリハリ

大小織り交ぜて配置されたショーケース。新設したスポットライトが当たり、商品が際立つ
段違いのテーブルには、福祉施設で制作された作品が並ぶ
 

 交付が決定したのは、申請から約2カ月後の8月。ロビーの休憩スペースと男女トイレのリニューアル工事も同時並行で実施した。
 ショーケース計7点と段違いのテーブル1点は、内装との統一感を持たせるため、全館の内装を手がけるインテリア業者にデザインや制作を依頼した。制作にかかった期間は1カ月ほど。出入口からフロントまでの導線と、フロントからエレベーターまでの導線に沿うように並べて配置し、多くの人の目に留まるようにした。ギャラリーのように楽しんでもらえるよう、天板の幅150cmほどのものと、40cm四方の小さいものを織り交ぜてリズムよく配置した。
 作品を際立たせるため、12個のLEDスポットライトも新設。天井に埋め込む形で、通常の照明よりも明るいものを数日間で施工した。
 ショーケースに並ぶのは、銀製の香立てやつまみ細工の髪飾りといった伝統工芸品だ。1000円前後の手頃な価格のものから、5万円を超える高価格のものまでさまざま。「荒川マイスター」たちを取りまとめる同区伝統工芸会事務局と販売数などを共有し、事務局からの連絡を受けて個別の事業者が追加の作品を同ホテルへ搬入する、という流れだ。また、区内の福祉施設で制作された布製ポーチや髪留めも展示販売している。

概算費用

総事業費 約230万円  そのうち補助金 約140万円

補助金・事業の活用スケジュール

申請:2022年6月
交付決定:2022年8月
実績報告提出:2022年12月
額確定:2023年2月
補助金受取:2023年3月

<効果>
新たなコミュニケーションのきっかけに スタッフの地元愛の強まりも

アートホテル日暮里ラングウッド
本村幸子 宿泊マネージャー

 伝統工芸品の展示販売は2022年12月から開始。チェックインやチェックアウト時、またエレベーターが来るまでのちょっとした待ち時間などに、ショーケースを見る人が増えた。商品に興味を持ちスタッフに声をかけてくる宿泊客もいる。本村マネージャーは「売上そのものよりも、関心を寄せてくれる人が少しでも増えてほしい。こうした興味関心が再訪につながると思う」と期待を寄せる。宿泊客とのコミュニケーションのきっかけにもなるため、スタッフも自然と興味を持って商品を見たり調べたりするようになり、「地域に対する愛着が増した」という声もある。
 今回の事業以前は接点の少なかった伝統工芸会や福祉施設の関係者とも、交流の機会が増えた。本村マネージャーは「サービス業として、多くの人たちと触れ合って自分の世界を広げることも大切」としつつ「お互いに交流を深めながら、一緒に荒川区を盛り上げていきたい」と意欲を見せる。