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海外OTAとの連携強化やPR動画で屋形船の魅力発信
~インバウンド・国内双方の需要に応える

活用した支援メニュー(最新版)
外国人旅行者受入に係る経営活力向上支援事業補助金

事業者情報

企業名
SIC合同会社(夢観月&月乃舟)
所在地
神奈川県横浜市中区柏葉34-18
HP
開閉式屋根の屋形船「夢観月」(左)とオープントップの「月乃舟」(右)

 SIC合同会社(夢観月&月乃舟)は、2016年から都内の河川や東京湾で屋形船クルーズ事業を展開し、都内では現在2隻を運航している。同社は2023年、「外国人旅行者受入に係る経営活力向上支援事業補助金」を活用し、自社サイトにおける海外OTA(オンライン旅行代理店)との連携強化やPR動画の制作・公開、音声翻訳機やクレジットカード用決済端末の導入などを通じて、外国人観光客をはじめとする幅広い客層の取り込みに注力した。

<補助金・事業を利用したきっかけ>
コロナ禍以前から意識していたインバウンド 新型船導入を機に取り込み拡大を図る

 同社はこれまで、主に隅田川や浜離宮周辺などで屋形船「夢観月」を運航してきた。コロナ禍においても、2020年には空気循環の促進のため三角屋根を撤去し、船の屋根を開閉式にするなど時代に合わせた工夫も重ねてきた。また、運航開始当初から訪日観光客の取り込みも意識していた。同社の田中秀一代表社員によると、都内で屋形船の事業を始めたのも「インバウンドの需要が圧倒的に大きかった」からだという。
 2022年秋頃、田中代表は新たに船の購入を決めた。東京2020大会に向けて造船所と海運会社がインバウンド需要をターゲットに建造を進めていた遊覧船が、コロナ禍の煽りを受けて完成直前にお蔵入りとなり、神奈川県内の資材置き場に長期間放置されているのを知ったことがきっかけだ。船体は紫外線の影響を受けボロボロの状態で、発電機も錆びついていたという。部品の交換や塗料の塗り直しを行い、更に著名な書道家による書のステッカーを貼るなど「和」を意識した内装に仕立てて運航できるように整備した。 
 新しい船の導入を契機に、インバウンドを含めたより多くの客層を取り込もうとクルーズの予約システムやPR動画の制作などを決め、2023年3月に補助金を申請した。

<補助金・事業を活用した取り組み>
海外OTAとの連携強化で訪日客取り込みへ 360度カメラを使った動画制作や翻訳機、決済端末の導入も

クルーズの魅力を伝えようと制作、公開した動画
船内に導入したクレジットカード用決済端末

 2023年5月に補助金の交付が決まると、主に訪日観光客をターゲットにした様々な施策に取り組んだ。
 元々取引のあった台湾のOTAサイトとの連携を強化し、予約導線を整備。季節ごとのクルーズプランもチェックできるようにした。OTAサイトと自社サイト、双方から予約ができるようになり、乗船までのハードルが下がった。
 また、クルーズの様子を動画で分かりやすく且つ魅力的に伝えるため、360度カメラを購入した。天候や船体の揺れなどの影響で撮り直しを余儀なくされたこともあったが、根気よく撮影を続けて船内からの眺望を効果的に疑似体験できる映像を作り上げた。川の航行中に日本橋のすぐ下をくぐる様子や、夜間ライトアップで青く輝く永代橋など特にインパクトの大きい景色をピックアップし、日英2言語のテロップを付けて約1分30秒の動画にまとめ、自社サイトのトップページで公開した。
 クルーズ中の観光案内を含め、乗客への対応は全て日本語で行ってきたが、外国人乗船客にも対応できるように音声翻訳機を購入。船内でクレジットカードによる乗船料金の決済ができる端末も新たに導入した。

<概算費用>

総事業費 約88万円  そのうち補助金 約53万円

<補助金・事業の活用スケジュール>

申請:2023年3月
交付決定:2023年5月
実績報告提出:2023年7月
額確定:2023年9月
補助金受取:2023年10月

<効果>
花火クルーズは外国人が9割 動画公開にも確かな手応え

SIC合同会社(夢観月&月乃舟) 
田中 秀一 代表社員

 インバウンドをしっかりと意識した取り組みの効果はてきめんだった。
 2023年7月下旬に実施した隅田川花火大会の観覧クルーズでは、乗船客の約9割を外国人が占めた。その内、約8割がOTAサイトに予約動線を整備して集客に力を入れた台湾からの利用客で、「予約のキャンセルが出ても、すぐにまた埋まった」ほどの人気だったという。また、音声翻訳機を導入したことにより、海外から訪れた利用客と受付スタッフやクルーのコミュニケーションがよりスムーズになった。
 自社サイト上のPR動画は、そのインパクトやイメージの掴みやすさが特に国内需要の取り込みに効果を発揮したようだ。新社会人や学生など若者を中心に利用が増え、確かな手応えを感じている。
 田中代表は一連の取り組みによる集客増の実感を振り返りながら、「これからは自社のFacebookやInstagramなど、SNSを使ったプロモーションに注力したい」と今後のプランを語った。