バリアフリーに取り組む「MIMARU」は医療的ケア児の旅行受け入れをはじめ、車椅子ユーザーの受け入れにも取り組んでいる。
足腰が不自由だったり、車椅子での移動を必要としていたりする方は多い。そのような方も旅行やおでかけを楽しみたいといった思いは変わらない。一方でインフラや移動の動線の制約から外出のハードルが高いことが課題となっている。
株式会社コスモスホテルマネジメントではこうした家族旅行を応援しようと、必要な備品を揃えたり、サービスを改善し、受け入れ体制を整えた。
「ホテル名の『MIMARU』は“みんなで泊まる”に由来します。『MIMARU』を利用されるゲストにはさまざまなお客様がいらっしゃいます。バリアフリーのニーズが生まれる中、障害がある方や車椅子のお客様にも当ホテルを利用していただきたいと考えています。また、バリアフリーにすることで、年配の方やベビーカーを利用するご家族も利用しやすくなります。ご家族が、一緒に家族旅行を楽しんでいただけるように応援したいですね」と同社の経営企画室関連事業推進課の永嶋剛課長は話す。
事例紹介
“みんなで泊まる”家族旅行を楽しみたい。車椅子ユーザーが利用しやすいアパートメントホテル
~「MIMARU」のバリアフリーの取り組み
- 活用した支援メニュー(最新版)
- 宿泊施設バリアフリー化支援補助金(令和7年度)
事業者情報
- 企業名
- 株式会社コスモスホテルマネジメント(MIMARU東京 錦糸町)
- 所在地
- 東京都墨田区江東橋4-11-5
- HP
- https://mimaruhotels.com/hotel/kinshicho/

コスモスイニシアグループの株式会社コスモスホテルマネジメントは、アパートメントホテル「MIMARU」を運営している。
このホテルは家族やグループでの宿泊に対応するため、多人数で過ごすことができる客室を提供しており、和室や団らんを楽しみながら就寝できるキングバンクベッド(上段・下段とも2人ずつ、合計4人で就寝できる広さを有した二段ベッド)を備えた部屋もある。
客室は広く、全室にキッチン・リビング・ダイニングスペースが備えられ、ファミリーのみならず、三世代で利用されるお客様や、障害がある家族と一緒に過ごすお客様の利用にも好評だ。
こうしたなか、同社では「MIMARU」を通して、誰もが旅する喜びを感じられる社会の実現に取り組んでいる。
<補助金・事業を利用したきっかけ>
バリアフリーの体制を強化し、障害の有無に関わらず旅行を楽しんでほしい
<補助金・事業を活用した取り組み>
ベッドサイドに置き型の手すり、浴室にバスグリップを購入・貸し出しを行うことにより、バリアフリーを実現


「MIMARU東京 錦糸町」では宿泊施設バリアフリー化支援補助金を利用して、ベッドサイドに置き型の手すり、浴室にはバスグリップを購入し希望者への貸し出しを行っている。
その背景には、車椅子のお客様が便利に使えるように高さが低いキッチンやベッドを設えた部屋も用意している一方で、中にはこうしたアクセシブルルーム(障害の有無に関わらず、すべてのお客様が使いやすいように配慮された部屋)を希望しないお客様もいたためだ。そのため、部屋を選ばずにバリアフリーを実現できる移動可能なアイテムに焦点をしぼって導入を検討した。
多種多様な設備や備品があるなかで、置き型の手すりとバスグリップであれば簡易的なバリアフリーを容易に実現できる。これらの備品は移動も簡単なため、ホテル内のどの部屋でも利用可能だ。永嶋課長は次のように話す。
「さまざまなニーズがある中、多くの情報を入手し『必要なものは何か』を取捨選択しました。バスグリップやベッドサイドの手すりがあることが、障害のあるお客様やそのご家族の安心材料になっています。
ホームページをご覧になったお客様から『車椅子の家族がいるけれど、シャワーやお風呂は利用できますか?』といった多くのお問い合わせをいただきます。バスグリップがあれば、こうしたご心配にもお応えできます。また、現在はアクセシブルルームを予約された方やお申し出のあった方には、コミュニケーションシートを送付し、貸出可能備品を先にお伝えし、使っていただきやすいようにもしました」。
<概算費用>
総事業費:約6万円
そのうち補助金:3万円
<補助金・事業の活用 スケジュール>
申請:2023年1月
交付決定:2023年3月
実績報告書:2023年7月
額確定:2024年8月上旬
補助金受取:2024年8月上旬
<効果>
チェックアウトのときにお客様から感謝の言葉をいただく

置き型の手すりやバスグリップを設置したことで、高齢のお客様にもご利用いただく機会が増えた。ベッドサイドの転倒や浴室で滑るリスクを軽減し、多人数で宿泊できる広い部屋であれば親子三世代で安心して旅行を楽しむ機会を提供できる。
「旅行することをためらっていたお客様も、安心して宿泊できるホテルがあれば、外出のきっかけになると思います」と永嶋課長はこう話す。
同社には、他者との違いを理解し、多様な視点や感性が身につくユニバーサルマナー検定3級を全社員が受講し、心のバリアフリーにも取り組んでいる。視点を変えると今まで見えなかったことが見えてくる。
スタッフの発案によって、車椅子のお客様の視点でホテルへのアクセス地図も作られた。一般的に最短、最速のルート案内が求められる中、車椅子の利用者に必要なことは傾斜が少なく、エレベータやスロープがあるルートだ。
「チェックアウトのときにお客様から感謝の言葉をいただくことが嬉しいです。新しいことにチャレンジしながら社会的貢献も進めていきたいですね」と同社のドゥンガナシバラムホテルマネージャーはこのように話し、今後も多様なニーズに応えるサービスの提供を目指していく姿勢を示した。