同ホテルは車椅子使用者用客室の設置義務基準が見直された改正バリアフリー法施行以前に開業しており、これまではバリアフリー対応の客室がなかった。ホテルを所有する光が丘興産株式会社の担当者によると、元々一定の広さがあるツインルームでは車椅子の稼働もスムーズにできていたが、車椅子利用者や高齢者がより安心して宿泊できる空間を整えようと、2019年頃にユニバーサルルームの整備を決めたという。東京観光財団の補助金の存在はグループ企業を通して知り、申請を決めた。事前相談を経て、2020年2月、客室リニューアルに向けて宿泊施設バリアフリー化支援補助金の申請を行った。
事例紹介
客室リニューアルを機に初のユニバーサルルーム整備
~エレベーターもバリアフリー化で誰もが安心・快適に
- 活用した支援メニュー(最新版)
- 宿泊施設バリアフリー化支援補助金(令和6年度)
事業者情報
- 企業名
- 光が丘興産株式会社(ホテルカデンツァ東京)
- 所在地
- 東京都練⾺区⾼松5-8
- HP
- https://www.h-cadenza.jp/
<補助金・事業を利用したきっかけ>
バリアフリー義務化以前に開業 ユニバーサルルーム整備でより安心できる空間を
<補助金・事業を活用した取り組み>
車椅子のままでも使い勝手の良い客室へ エレベーターのバリアフリー化も
2020年4月、ツインルーム1室のバリアフリー化工事が始まった。バスルームには、車椅子に乗ったままでも使いやすい高さの洗面台や出入りが容易にできる補助器具付き浴槽、開閉の利便性に優れたスライドドアなどを設置。ベッドは両脇にハンドレールが付いた電動リクライニング式で、使い勝手の良い快適な部屋づくりを追求した。視覚・聴覚障がいがある宿泊客の利用を想定し、来客時や来電時、目覚まし時計の作動時などに光や音、振動で知らせるアラームクロック受信器の貸し出しも始めた。
工事に際しては、客室設備に必要な部品のメーカーがモデルチェンジを行う時期や新型コロナウイルスの流行初期と重なり、「施工業者にとっては部品調達が大変だった」と担当者は振り返る。困難に見舞われながらも工事を進め、同年8月、同ホテル初のユニバーサルルームが誕生した。
翌2021年にはホテル内のエレベーターのリニューアルに合わせたバリアフリー化も検討し、再び同補助金を申請した。リニューアル工事を通して日英2言語の音声案内装置や車椅子利用者用の操作盤、扉接触防止センサーといった設備・機能を充実させ、元々あった手すりの位置も調整した。
<概算費用>
<客室>
総事業費 2,343万円 そのうち補助金 約1,723万円
<エレベーター>
総事業費 4,279万円 そのうち補助金 約225万円
<補助金・事業の活用スケジュール>
<客室>
申請:2020年2月初旬
交付決定:2020年2月末
改修工事着手:2020年 4月
改修工事完了:2020年7月下旬
ユニバーサルルーム利用開始:2020年 8月
実績報告提出:2020年9月末
額確定:2020年10月下旬
補助金受取:2020年11月末
<エレベーター>
申請:2021年3月下旬
交付決定:2021年6月上旬
改修工事実施:2021年9月~10月
エレベーター利用開始:2021年10月
実績報告提出:2021年12月中旬
額確定:2022年1月下旬
補助金受取:2022年2月上旬
<効果>
利用客の意見を反映、従業員の意識向上も
同ホテルの担当者によると、リニューアルした客室は、車椅子利用者や高齢者が家族・夫婦で長期休暇中に利用することが多い。「車椅子をご利用で、月に一度リフレッシュを目的に泊まりに来られるお客様もいる」といい、リピーターも獲得している。
ユニバーサルルームの整備をきっかけに、ホテルではハード、ソフトの両面でバリアフリーにまつわる良い変化が起きた。利用客の意見を取り入れ、車椅子から立ち上がる際などにつかまるための手すりを客室内に追加で設置したり、従業員の間でもバリアフリーへの意識が高まり、サービス介助士の資格を取得するスタッフが出てくるなど、より一層快適な施設への進化が続いている。