大塚代表がヴィーガンメニューを取り入れたきっかけは、自身と家族の健康のためであった。大塚代表自身がアトピーやアレルギーを抱え、長男も同じ体質だったという。病院に通っても改善せず、「食べ物を見直さなければ」と感じた大塚代表は、食事内容を変えながら学びを深めていくことにした。
また、大塚代表は栄養士の免許を持っていることもあり、元々食に対する意識は高かった。栄養士の勉強をする中で、添加物や香料、着色料の成分を学び、「どれだけ体に負担がかかるか」を実感したという。そうした経験が、安心して食べられる料理へのこだわりにつながっていくこととなった。
その後、コロナ禍をきっかけに「免疫力を高めたい」と考えるようになり、食事への関心がさらに深まった。大塚代表は素材や調理法について学ぶ中でヴィーガン料理の存在を知り、強い興味を抱く。都内のヴィーガンや精進料理の店を訪ね歩き、さまざまな味に触れるうちに、「自分の店でもヴィーガン料理を取り入れてみよう」と考えるようになった。
しかし、独学では限界があると感じた大塚代表は、ヴィーガン料理を提供する店舗を支援している東京観光財団に相談。ヴィーガンの認証取得に興味を持ち、いくつかのヴィーガン関連の団体の中から、NPO法人ベジプロジェクトジャパンに相談することを決めた。
さらに、申請費用の一部を補助する「飲食事業者向けベジタリアン・ヴィーガン認証取得支援補助金」の存在を知り、本格的にヴィーガン料理を取り入れる決意を固めた。
事例紹介
ヴィーガン認証を取得し、海外からも支持される店に
~健康への想いが広げた、食と人のつながり
- 活用した支援メニュー(最新版)
- 飲食事業者向けベジタリアン・ヴィーガン認証取得支援補助金(令和7年度)
事業者情報
- 企業名
- 有限会社 大塚企画(旬材・地酒処 桃太郎)
- 所在地
- 東京都練馬区北町2-25-9
- HP
- https://www.instagram.com/toubunerimamomotarou/
旬の食材と地酒を楽しめる居酒屋「旬材・地酒処 桃太郎」は東武練馬駅から徒歩3分、住宅街の一角に店を構えている。店内では、全国各地の珍しい日本酒を取り揃え、無添加、無農薬の食材にこだわった料理が評判だ。
さらに、「旬材・地酒処 桃太郎」には、ヴィーガンやベジタリアンの方でも安心して楽しめる料理が揃っている。
本記事におけるヴィーガンとは、動物性のものを一切摂らず、植物性の食材から栄養を摂る食事の主義を指す。ベジタリアンも、動物性食品を摂らず、植物性食品を摂る主義ではあるが、乳製品や卵を食べる人たちも含まれる。
日本の居酒屋ではまだ珍しい取り組みだが、こうしたメニューを取り入れた背景には、店主であり有限会社大塚企画の大塚理昭代表取締役の「食」への強い想いがあるという。
今回は、大塚代表に、ヴィーガンやベジタリアン向けメニューを考案したきっかけと、その取り組みについてお話を伺った。
<補助金・事業を利用したきっかけ>
自身の経験を原動力に、体に優しい食文化を広げる
<補助金・事業を活用した取り組み>
知識と実践を積み重ね、認定審査を通過
大塚代表は、NPO法人ベジプロジェクトジャパンに「メインとなるメニューにヴィーガン対応を含むベジタリアン料理の選択がある飲食店」としてヴィーガン認証の申請を行った。
審査では、店舗の衛生面などの基本的な審査はもちろんのこと、醤油や粉などの基本的な調味料から原料の産地、製造過程まで細かく確認が入った。ときには「この大豆はどんな土で育ったのか」といった栽培環境まで問われたという。
認定を目指す中で、大塚代表はヴィーガン食材を扱う展示会や関連イベントにも積極的に参加。ヴィーガン料理を実際に食べて研究を重ね、現場の経験から、味や調理法の幅を広げていった。
また、大塚代表は認定を取ろうと考えた際に「美味しくて安全なものを提供したい」という想いが根底にあった。
審査は3〜4回にわたり、ヴィーガンに関する知識や調理実技、説明などを経て、約1年をかけて認定を取得した。
<概算費用>
総事業費:5万5,000円
そのうち補助金:2万5,000円
<補助金・事業の活用スケジュール>
申請:2024年3月
交付決定:2024年5月
実績報告書:2024年11月
額決定:2025年7月上旬
補助金受取:2025年7月上旬
<効果>
優しい料理がきっかけで、海外からも支持される店へ
まず、NPO法人ベジプロジェクトジャパンに出会えたことが大きな転機となり、活動の幅が広がった。志を同じくする仲間とのつながりも生まれ、情報交換や交流の機会が増えたという。また、ヴィーガン料理を提供する店舗として、紙媒体やWEBなどに紹介されることも増えたとのこと。
さらに、訪日外国人旅行者のお客様が増えたことも大きな変化である。NPO法人ベジプロジェクトジャパンの紹介をきっかけに来店する方も多く、これまでになかった国際的なつながりが生まれている。初めのうちは接客に戸惑うこともあったが、スマートフォンの翻訳機能やボディランゲージを使えば、言葉が通じなくても心は通じることに気がついたという。
大塚代表の作るヴィーガン料理は、すべて無農薬・有機野菜を中心としたグルテンフリー。ラザニアはオートミールを高温で揚げて肉の食感を再現し、豆乳や味噌で味に深みを出す。肉だんごあんかけにもオートミールを練り込み、まるで本物の肉のような食感を実現している。下準備が必要であるため、ラザニアと肉だんごあんかけ等一部のメニューは要予約にしているという。
調味料も良質なものを選び、手間を惜しまない。「自分がアトピーを抱えていたからこそ、体に優しくて美味しい料理を届けたい」と大塚代表。ヴィーガンの方はもちろん、食事に悩む人の助けになりたいという想いが、料理の一皿一皿に込められている。
また、「旬材・地酒処 桃太郎」では、約20種類のヴィーガンメニューのみならず、肉や魚を使った料理も揃っており、ヴィーガンとノンヴィーガンが同じ食卓を囲めるのが特徴だ。これまでにもドイツ、インド、フランスなど、さまざまな国からの訪日外国人旅行者が訪れ、口コミの輪が広がっている。
和食は出汁や調味料に動物性の素材を使うことが多く、ヴィーガンメニューに対応できる店舗はまだ少ない。そのため、訪日外国人旅行者が日本での食事に困る場面は少なくない。
「以前来店されたインドのお客様は、初めは不安そうでしたが、食べ進めるうちに笑顔になっていきました。『美味しい』と何度も言ってくださって、うれしかったですね」と大塚代表は語る。
大塚代表は認定取得前から現在まで、ヴィーガン料理の研究を続けている。5年間で10回以上の展示会に足を運び、40店舗以上のヴィーガン料理を実際に食べて味や調理法の幅を広げていっている。今後はヴィーガン向けのスイーツにも挑戦していく予定だ。
「これからも、お客様を大切にしていきたいです。日本の方も外国の方も、美味しいものはみなさん同じなんですね」と大塚代表は笑顔を見せた。