2016年ごろ、博物館のネットワークを通じて補助金に関する案内がメールで届いた。内容を確認した同館の亀谷事務長は「申請できる項目があればぜひ活用したい」と、常に頭の隅に置いて検討していたが、申請のタイミングや事業がなかなか合わず、活用には至っていなかった。
転機が訪れたのは、2020年12月ごろ。車いす利用者のための出入口スペースに設置してあったリフトの不調が顕著になっていた。当時、稼働開始から既に25年程度が経過していたことに加え、車いす自体の重量化傾向による影響もあったとみられる。リフトの昇降速度が遅くなっており、現在のバリアフリー化の基準に適合する新たなリフトへの交換が急務となった。
車いすを利用する来館者は月に数人程度とはいえ、十分に増加傾向といえる人数だった。亀谷事務長は「リフトを設置しないわけにはいかない。まだ動くうちに直さなければならない。今が申請のタイミングだ。」と、交換工事とともに補助金の申請を決めた。
事例紹介
バリアフリー化基準に適合した車いす用リフトの改修
~車いす利用者の入館がスムーズに
- 活用した支援メニュー(最新版)
- 美術館・博物館等の観光施設の国際化支援補助金(令和7年度)
事業者情報
- 企業名
- 目黒寄生虫館
- 所在地
- 東京都目黒区下目黒4-1-1
- HP
- https://www.kiseichu.org/

目黒寄生虫館は寄生虫を専門に扱う私立博物館で、2023年に創設70年を迎えた。国内外から集められた約300点に及ぶ標本と関連資料を展示している。人体や動物に寄生するさまざまな寄生虫を標本や動画で紹介し、多くの来館者の関心を集める。
同館は「美術館・博物館等の観光施設の国際化支援補助金」を活用し、2021年春に車いす用リフトの交換工事を実施。車いす利用者のスムーズな入館を実現した。
<補助金・事業を利用したきっかけ>
補助金の積極的な活用を考えていたころ、車いす用リフトの不調が発覚
<補助金・事業を活用した取り組み>
図面作成と申請を経て、基準に合ったリフトを設置


2021年に入り早速、補助金申請の準備に取り掛かった。亀谷事務長はメジャーを手にリフト周辺の車いすの動線に当たる箇所の幅などを計測し、写真撮影や段差の確認なども行い、それらをもとに図面を作成した。1月中に補助金の申請を行い、年度が変わって間もない4月にバリアフリー化の基準(※)に適合する新たなリフトの取り付けを行った。工事自体は1日で完了し、車いす利用者を安全に受け入れる準備が整った。
※東京都福祉のまちづくり条例施設整備マニュアル
概算費用
総事業費約 100万円 そのうち補助金 45万円
補助金・事業の活用スケジュール
リフトの不調が発覚し、交換を検討:2020年12月
申請:2021年1月
業者へ施工を発注:2021年3月
リフト交換工事実施:2021年4月
業者による建築確認の実施と費用の支払い:2021年7月
実績報告提出:2021年7月
補助金受取:2021年10月
<効果>
使い勝手の良いリフトで入館がスムーズに

交換後のリフトは昇降速度が向上し、車いす利用者のスムーズな入館が実現した。昇降ボタンが複数あり、操作性にも優れている。定期的な検査に相応の費用はかかるが、利用者の安心・安全に大いに寄与している。
博物館は入館無料で、基本財産の運用益をはじめ、来館者らの寄付金やミュージアムショップの売り上げなどで運営を維持している。亀谷事務長は補助金の存在について「博物館を運営していく上で、非常に大きな支えとなっている」と言葉に力を込める。