「竹芝エリアはビジネス街としての認知が高いのですが、インバウンドを含む観光客の誘致にも力を入れており、水に恵まれた地形を活かした集客コンテンツがないかと常日頃から考えていました」と語る一般社団法人竹芝タウンデザイン事務局(以下、同事務局という。)の松岡氏と露木氏。
新型コロナウイルスの流行でエリア全体の観光集客が落ち、その回復のためにも、まずはエリアの認知度を上げる必要があった。徒歩圏内に利用者数の多いJR浜松町駅もあるため、魅力的なコンテンツを造成してビジネス以外の集客も図りたいと構想を練っていた。
ウォーターズ竹芝には水辺に面した広大な芝生広場がある。芝生広場には存在感のある大階段も佇み、同事務局はこの場所を活用して集客コンテンツを作ることにした。
ウォーターズ竹芝は、毎年冬期にイルミネーションの点灯をしており、イルミネーションを目的に来る方も多くいたが、更に他所との差別化を図るため「クリスマス時期に水辺をイメージできるコンテンツを作りたい」と考えた。
時を同じくして同事務局職員の知り合いでプロジェクションマッピング関連の仕事をしている方から、「プロジェクションマッピング促進支援事業助成金」の存在を知る。水のようにゆらめく光を使った装飾ができる「プロジェクションマッピング」のアイデアが生まれ、補助金申請を決断した。
事例紹介
ウォーターズ竹芝にプロジェクションマッピングが誕生
~立地を活かした観光コンテンツで集客を図る
- 活用した支援メニュー(最新版)
- プロジェクションマッピング促進支援事業助成金(令和7年度)
事業者情報
- 企業名
- 一般社団法人竹芝タウンデザイン(ウォーターズ竹芝)
- 所在地
- 東京都港区海岸1-10-30
- HP
- https://waters-takeshiba.jp/

東京都港区竹芝は、オフィスや商業施設が入った高層ビルが立ち並ぶエリアとして認知されている。また、このエリアは海に面しており水上バスでお台場や浅草への移動も可能だ。海と共に発展してきた竹芝エリアは都心でありながら、水辺という自然に恵まれており「世界的な水辺」を目指したまちづくりを行っている。
そして、その水辺を中心としたオフィスビル、商業施設、ホテル、劇場から構成される複合施設として「ウォーターズ竹芝」が創設された。水辺付近には歴代将軍に愛された日本庭園「浜離宮恩賜庭園」があり、高層ビルと日本庭園のコントラストも愉しめる。
一般社団法人竹芝タウンデザインは、水辺やウォーターズ竹芝を中心としたまちづくりを立体的に推進するタウンマネジメント組織として、2019年8月1日に設立された。官民連携プラットフォームである竹芝Marine-Gateway Minato協議会(MGM)などの団体と連携して竹芝エリアの地域活性化に取り組んでいる。
主な業務として竹芝地区船着き場の管理、かつて東京湾に多く生息した魚類や貝類・甲殻類などの多様な生き物が生息できる連続的な環境の保全・再生を目指す竹芝干潟を利用した地域活性化、ウォーターズ竹芝の芝生広場を活用したイベント開催、広場の管理などを行っている。
<補助金・事業を利用したきっかけ>
集客できる魅力的なコンテンツを造成するため、プロジェクションマッピングを考案


<補助金・事業を活用した取り組み>
立地を活かし、水辺をイメージしたコンテンツを開発

同事務局内で協議を重ねた結果、水をイメージできる「青い光」をテーマにプロジェクションマッピングを実施する方向性となった。
クリスマスのイメージカラーは赤、緑、金色などが一般的ではあるが、あえてイメージカラーを青にすることにより、他所との差別化を図るとともに、水辺のイメージを強めることにした。
コンセプトが固まり、COLORs CREATION株式会社所属のアーティスト“WHITE-BASE”に制作を依頼、タイトルは「碧の奇跡」となった。
水辺のクリスマスをテーマとした「碧の奇跡」は2023年12月15日~25日の11日間限定で実施し、イベント期間内の17時から21時5分の毎時間0分、30分に芝⽣広場横の⼤階段にプロジェクションマッピングの映像が投影された。
大階段という立体構造を活かして、滝をイメージした水の流れを演出、さらにはクリスマスをイメージした光をちりばめ、期間中は大階段が幻想的に彩られた。
また、水辺を行き来する観光クルーズ船からもプロジェクションマッピングが見え、この地ならではの観光コンテンツが完成した。
交通広告、SNS広告、イベント情報サイトなどで幅広い告知も行われた。
<概算費用>
総事業費:3,585万円
そのうち補助金:約1,686万円
<補助金・事業の活用スケジュール>
申請:2023年8月
交付決定:2023年10月
実績報告書:2024年2月
額確定:2024年3月中旬
補助金受取:2024年3月下旬
<効果>
イベント期間中の滞留人口が昨年の約2倍に、見事集客に成功した


「碧の奇跡」は大好評となった。
芝生広場に設置された人流カメラによると、イベント期間中の芝生広場の滞留人口は昨年の約2倍となり、隣接しているアトレ竹芝の売り上げにも貢献した。
また、ウォーターズ竹芝の公式Instagramに投稿された「碧の奇跡」のリール動画2本は合計15000回近くも再生された。
期間中は、同事務局がターゲットにしていた成熟した感度を持った就業者やカップルの方々も多く来訪してくれたとのこと。
プロジェクションマッピングは5年間の継続が計画されている。
2年目は1年目を振り返り、スピーカーの位置の工夫をしたりプロジェクションマッピングの上映時間を長くしたりして滞留時間を伸ばしていきたいとのこと。また、プロジェクションマッピングへの没入感を大切にするためロケーションにもこだわっていく。
来客の年齢層を広げ、最終的には「水辺の遊園地」となることを目指している。
「補助金を申請したことによりプロジェクションマッピングのスケールアップができました。自分たちの力だけでは成しえなかったことを補助金によって実現でき、活動の幅が広がったと思います」と語る松岡氏。同事務局の今後の取り組みにも期待したい。