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“竹”の光が人を呼び、隅田川の両岸をつなぐ。「東京下町回遊 竹あかり」の取り組み
~東武鉄道株式会社と地域が取り組むライトアップイベント

活用した支援メニュー(最新版)
ナイトタイム等(夜間・早朝)における観光促進助成金(令和7年度)

事業者情報

企業名
東武鉄道株式会社
所在地
東京都墨田区押上二丁目18番12号
HP
すみだリバーウォークと竹あかりのライトアップ

浅草と東京スカイツリーは、国内観光客のみならず多くの訪日観光客を惹きつける強力な観光コンテンツだ。隅田川を挟むこの2つのエリアの距離は約1.5km、徒歩では約20分。回遊するには丁度良い距離感だが、人の流れは必ずしも多くはなかった。

この2つのエリアの間にある遊歩道が「すみだリバーウォーク」。東武スカイツリーラインの隅田川橋梁(鉄道橋)に隣接して造られた歩行者専用の橋は、すぐ横を走る電車を間近に見つつ、足元のガラス張りの床から隅田川の流れも見ることができる。
浅草と東京スカイツリーとの間の回遊を目指した「すみだリバーウォーク」は、2020年の開通以来、日中は多くの人が行き交っている。一方、11月〜2月の夜間は通行量が少なく、人の流れを増やすことが課題だった。

東武鉄道では「すみだリバーウォーク」の冬季・夜間の回遊性向上を目的に、2023年11月9日から2024年1月31日までの間「東京下町回遊 竹あかり」を開催。すみだリバーウォークと隅田公園そよ風ひろばを竹あかりで灯すライトアップのイベントは新たな人の流れを呼びこんだ。

地域に根付き、広がりはじめたイベントについて、東武鉄道株式会社観光事業推進部の江森敬太課長補佐、同社新規事業担当の大矢幸代主任、同社観光事業推進部の権東氏の3名にお話を伺った。

<補助金・事業を利用したきっかけ>
ナイトタイム観光のコンテンツの一つに、「竹あかり」に着目

隅田公園で実施した「竹あかり」

「スタートは2022年の取り組みからです。当初は地域の来訪者を増やしたいと企画しました。「竹あかり」の空間演出で知られる「CHIKAKEN(ちかけん)」の三城賢士氏に依頼して牛嶋神社のライトアップと、区内の小学生向けに竹あかり制作のワークショップを開催しました。

2023年には東京観光財団さんに相談しつつ「令和5年度 夜間・早朝利活用促進助成金」を申請し、実施エリアやコンテンツを拡充した『東京下町回遊 竹あかり』に取り組みました。」と、江森課長補佐は経緯についてこのように話してくれた。

<補助金・事業を活用した取り組み>
竹あかりを主軸に、地域全体で取り組んだ新たな観光モデル

フォトスポットとして人気のスカイツリーと竹あかりのコラボレーション
地域の方たちに向けたワークショップ
運営・主催は墨田区観光協会が実施したナイトマルシェ
浅草を訪れる観光客向けに計画したインバウンドガイドツアー

2023年の取り組みでは、ライトアップのエリアやイベントの数も増え、開催規模が拡大した。関わる団体が増え、地域一帯を盛り上げる仕組みが構築された。

メインコンテンツとなる竹あかりライトアップは牛嶋神社に加え、すみだリバーウォークと隅田公園でも実施した。また、墨田区観光協会と連携し、同観光協会が主催する毎月1度の野外イベントを、ライトアップに合わせて夜間まで延長する「ナイトマルシェ」を新たに開催。地域経済も潤う仕組みが作られた。

さらにインバウンドガイドツアーを実施した。これは、ガイドツアーを手がけるTokyo localizedと連携したまち歩きツアーだ。隅田川沿いのライトアップを楽しみながら、東京の歴史や文化をガイドが無料で語ってくれる。ツアーが気に入れば投げ銭方式でガイドがお金をいただく様になっている。

これらのさまざまな企画が融合し、人々が浅草、東京スカイツリーエリアを回遊する舞台が作られた。江森課長補佐は同社の観光事業の変化を次のように話してくれた。

「これまで弊社の観光事業の取り組みは、特急スペーシアや東京スカイツリーといった自社コンテンツにお客様を呼び込むことが主体でした。今回『東京下町回遊 竹あかり』を起点として、地域と共にコンテンツを作り上げていく活動が加わりました。直接的な収益がなくとも、地域に面白い種を作り、賑わいを呼び込むことは、地域と自社が共に成長する両輪だと考えています」。

<概算費用>

総事業費:890万円
そのうち補助金(交付決定額):540万円

<補助金・事業の活用 スケジュール>

申請:2023年6月
交付決定:2023年8月
実績報告書:2024年3月上旬
額確定:2024年3月下旬
補助金受取:2024年4月

<効果>
小さく始めて大きく成長。「東京下町回遊 竹あかり2023」は、人流アップに大きく貢献

左から、東武鉄道株式会社 観光事業推進部 権東 氏、江森 敬太 課長補佐、新規事業担当 大矢 幸代 主任

では2023年度の「東京下町回遊 竹あかり」の成果はどうだったのだろうか。まず人の流れが2022年に対して大きく増加。11月9日〜1月31日の前年同日比では、浅草側から東京スカイツリー方向へは約136%アップ、反対方向の東京スカイツリー側から浅草方向では約150%アップした。また、当初の課題であった「すみだリバーウォーク」の冬季・夜間の通行量も増加した。

ライトアップを紹介するInstagramの投稿数が増加。イベント期間(11月〜1月)とイベント期間外では、投稿数は1.5倍、コメント数は3.9倍となっている。さらにテレビや新聞、FMラジオなどマスメディアで紹介されたことで、認知が向上した。

江森課長補佐は、成果を出せたポイントは、想いのある関係者が小さく始めたことだと話す。

「スモールスタートが良かったと思います。最初から大風呂敷を広げてしまうと、利害関係の調整や運営維持が大変ですが、関係者を巻き込みながら少しずつ取り組みを広げていったことが、結果的に大きなイベントになったのではないでしょうか。地域の人たちにも受け入れられた理由だと思います。

来る2024年のイベントではさらに関係者が増える予定です。また自主費用による団体の参画も予定され、助成金を活用しなくても運営できるイベントやツアーの自走化も期待されています。今後は『東京下町回遊 竹あかり』を東京の見るべきイルミネーションスポットにしていきたいですね」。

補助金を活用し東武鉄道が始めた取り組みは、隅田川の両岸を巻き込んだイベントへと成長し始めている。