「弊社は新卒入社の方が多く、中途入社の採用が少ない為、社外の第三者の意見を聞く機会が少なかったのです」
そう語るのは、株式会社読売旅行事業統括本部広報兼インバウンド事業グループ 漉橋(すきはし)寛子サブマネージャーだ。
同社の課題でもあったWEBプロモーションに関してのアドバイスを求めたいと、東京観光産業ワンストップ支援センターの「東京観光産業アドバイザー派遣事業」に申し込むことにした。
その中で、プロモーションに限らず、広い視点で経営課題を洗い出したいという意見も出て、熟考した結果、旅行会社での勤務経験がある中小企業診断士のアドバイザーに助言を受けることとなった。
事例紹介
アドバイザーの活用による経理システムの見直し
~外部の視点で経営改善を行い、社員の満足度向上につなげた取り組み
- 活用した支援メニュー(最新版)
- アドバイザーを活用した観光関連事業者支援事業 (令和7年度)
事業者情報
- 企業名
- 株式会社読売旅行
- 所在地
- 東京都中央区築地2-5-3 読売築地ビル
- HP
- https://www.yomiuri-ryokou.co.jp

東京都中央区築地に本社を構える株式会社読売旅行は、設立から60年を超える地域密着型の旅行会社である。「あなたの街から」をコンセプトに、お客様が居住地近くから出発できるよう、全国に乗車地が設定されているバスツアーが有名だ。
読売旅行は、読売新聞東京本社の関連会社で、子会社に「株式会社旅行読売出版社」を持つ。
新卒入社の社員が多く、社員を大切にする方針で経営をしている。
同社は、「アドバイザーを活用した観光事業者支援事業補助金」を活用し、社内のシステムの見直しから経営の改善を図った。
<補助金・事業を利用したきっかけ>
外部の視点を求め、アドバイザーに相談

<補助金・事業を活用した取り組み>
課題となっていた経理業務の負荷軽減。根本的な課題を洗い出し、システム更新時に補助金を申請
以前より経理の業務の負荷軽減は課題となっていた。
アドバイザーは会社の全体的な経営状況を見て、どこに一番の課題があるのかを洗い出すことから開始した。
まずは、経理部の社員と予約センター、総務などで経理、精算業務に携わる社員と面談し、個々の課題を調査する。
その結果、経理、予約、給与のシステムにおいて多数の勘定科目コードが存在している事による業務の複雑化、業務が属人化されている課題が浮き彫りになった。また、予約システムの自動化が進んでおらず、人の作業に頼る場面が多く、それが社員の負担になっていることがわかった。
ちょうど経理システム、予約システム、人事給与システムがそれぞれ更新時期を迎えていたのに合わせ、その負担を減らすべく、まずは社内システム間のコードの統一に着手する。経理担当者と現場担当者の間で費用項目や精算方法の認識が異なり、担当者同士の確認に時間を取られていたのだ。その課題を解決するため3部署にまたがる仕分けコードを共通化することで、その乖離を減少させ、業務の整理を進めていった。
また、旅行会社の勘定科目には多くの費用項目が存在する。同社には500種類以上もの費用項目が存在しており、旅行原価が正しい費用項目で登録されているかの確認作業だけで膨大な時間を費やしていた。アドバイザーはこのコードを300種類までに絞ることを提案する。
システム間のコード統一や費用項目の圧縮など、「実現可能なのか、そしてそれが正解なのか」と自信が持てない中、「アドバイザーが背中を押してくれたことが大きかった」と語る漉橋サブマネージャー。
アドバイザーが旅行会社出身で、過去の事例から自信を持ってアドバイスをしてくれたため、実施に踏み切れた。
また、同社の予約システムや支払いシステムは上記の通り、自動化が進んでおらず、人の作業に頼るところが多かったため、改変に取り組むことにした。
改変にあたっては、アドバイザーから「アドバイザーを活用した観光事業者支援事業補助金」を活用する提案があり、補助金へ申請することとなった。その結果、お客様に手間を取らせる上に、ミスが発生することもあったWEBクレジット返金手続きにおいて、その課題に着目したアドバイザーの助言で、クレジット払い戻しの際は自動的に返金ができるシステムを導入した。また、添乗員に添乗準備金の仮払いをする際、以前は手渡しで行っていたが、こちらも振込みシステムを導入して、社員の負担を軽減した。
その他にも、ゆうちょ自動払込みのシステム改善、PayPay決済の追加など、現場の作業が効率化することに焦点を絞り、システムの導入を図ることができた。


<概算費用>
総事業費:319万円
そのうち補助金:約194万円
<補助金・事業の活用スケジュール>
申請:2023年3月
交付決定:2023年5月
実績報告書:2024年2月
額確定:2024年3月上旬
補助金受取:2024年3月中旬
<効果>
新たな経理システムの導入による業務効率化

「アドバイザー派遣により社内の課題が明確になり、それを改善すべく補助金を活用し、経理システムによる自動化などを行ったことで、今まで手動で行っていた膨大な作業時間が圧縮されるなど、業務効率が格段に上がりました」と嬉しそうに語る漉橋サブマネージャー。
また、業務システムが統一されたことにより、部署間での確認作業が減り、繁雑な業務のスリム化を実現した。
関係部署の社員からは「自分たちの業務を気にかけてもらえたことがとても嬉しかった」という言葉も出たという。
経験が豊富なアドバイザーが会社の経営全体を診断したことにより、課題の本質が明らかになった。また、実際に新たなシステムを導入する際、アドバイザーの豊富な経験から「大丈夫」と念押しをもらえたことは今後の業務の自信にも繋がったとのこと。
次年度以降も同じアドバイザーと新たな施策に取り組む予定だ。
「今後も、自社の経営状況、課題などを的確に把握しつつ、業務効率化を行い、経営の改善に寄与していきたい」と漉橋サブマネージャーは笑顔で言葉を締めくくった。