株式会社ウェルネス・アリーナでは、東急グループのプロジェクトへの参画に際し、「スパの世界観を叶えるために活用できる補助金を探している」と、東京観光財団の担当者に相談した。そこで推薦されたのが当補助金だった。
「補助金の申請は初めてでしたが、これまでの東京観光財団の事例ではサステナビリティに配慮した取り組みが少なかったため、活用する意義があると判断しました。『東京を発信したい』と、志をお持ちの東京観光財団にも貢献できる象徴的なプロジェクトになるのではないだろうかと考えました」と、梶川代表取締役社長は話す。
事例紹介
「東京らしさ」発信するラグジュアリースパのサステナブルな取り組み
~ホテル業界初!リサイクルアメニティボトルで実現したエコシステム
- 活用した支援メニュー(最新版)
- 観光経営力強化事業(令和6年度)第2回
事業者情報
- 企業名
- 株式会社ウェルネス・アリーナ(SPA sunya)
- 所在地
- 東京都渋谷区恵比寿南3-7-10 グランドメゾン代官山601
- HP
- https://www.warena.net/

アジア屈指の歓楽街といわれる東京都新宿区歌舞伎町。町名は第二次世界大戦後の復興期に歌舞伎座を誘致しようとしていたことに由来する。しかし、一部を除いて計画は頓挫し、歌舞伎座は銀座の地に。町名だけが残った歌舞伎町に、東急グループの祖、五島慶太がアドバイスをして国際博覧会を誘致。その後、ダンスホールやボウリング場などを運営し、歌舞伎町は「エンターテインメント」を提供する場として栄えていった。
そうした東急グループの経営活動が結実したのが、2023年4月にオープンした東急歌舞伎町タワーだ。エンターテインメント施設とホテルからなる超高層複合ビルには、ミシュランキーホテル(※1)に輝いた「BELLUSTAR TOKYO, A Pan Pacific Hotel」が入居する。このラグジュアリーホテルの最上階、47階にあるのが「SPA sunya(スパ スーニャ)」だ。
サンスクリット語で「空」を意味する「sunya(スーニャ)」を名前に冠するスパでの体験は、静寂と安らぎに満ちている。地上からエレベーターで天空のスパへと到着すると、季節によって変化する国産精油をブレンドしたオリジナルアロマが香り、心地よいヒーリング音楽が流れている。ここを訪れる人たちは、誰しも日常のストレスから心身が解放されるそうだ。
株式会社ウェルネス・アリーナの梶川貴子代表取締役社長は次のように話す。
「スパのコンセプトとして、世界中を旅する人たちが『東京らしさ』を無意識に体感できる世界観を考えました。東京は世界でも類を見ないほど都市の中に自然が存在します。
人の営みの中に自然が共存する姿こそ『東京らしさ』だと位置づけ、市中にありながら日常の雑踏から切り離され自然を感じる場所として、茶の湯の『市中の山居』にも通じる思想を、歌舞伎町の天空のスパに実現したいと考えました」。
このようなコンセプトや、東急グループとの共同プロジェクトの話があり、観光経営力強化事業補助金を活用し開発されたのが、リサイクルアメニティボトルとサステナブルなエコシステム、そして東京の街から音源を採取した独自のスパミュージックだ。ホテル業界では初(※2)、リサイクル可能なアメニティボトルは、スパのコンセプトに沿って開発・導入された。
(※1)ミシュランキーホテル:ミシュランガイドによって、優れたホテルに授与されるシンボル。1〜3つの3段階のキー(鍵)で評価される。3ミシュランキーが最高評価
(※2)株式会社BEAUTYCLE(ビューティクル)調べ(調査年月:2023年6月/ホテル業界におけるボトル水平リサイクルシステムに関して)
<補助金・事業を利用したきっかけ>
世界に向けて「東京らしさ」を伝える。補助金活用の意義ある取り組み


<補助金・事業を活用した取り組み>
ホテル業界初! リサイクルアメニティボトルとエコシステムの実現
今回の取り組みでは、リサイクルアメニティボトルの開発とエコシステムの実現、独自のスパミュージックの開発を行った。
特に注目したいのは東急グループと共同で実施したリサイクルアメニティボトルの開発だ。このプロジェクトでは容器のリサイクル化に加え、納品と容器の回収を同時に行う仕組みを構築し、配送上のカーボンニュートラルも実現。アメニティボトルの完全リサイクルを実現した。一方で、安全性とサステナビリティ、ボトルのデザインとコストの両立には苦労したという。
「ゴミを減らす観点では、ポンプタイプのリサイクルボトルがよく使用されていますが、安全性の面では個包装の使い切りボトルが優れていますから、はじめから個包装にこだわって開発しました。また、ラグジュアリーホテルに適したデザインや、素材・インクの選定、そして幾度にもわたるサンプルコストの問題も、検討すべき重要な要素でした。
サンプルのやり取りなどには補助金を活用して対応することで徹底的に理想を追求できました。最終的には、個包装でありながらリサイクル可能で、デザイン面でも満足できるボトルが完成しました。このプロジェクトに関わった人たちは、最高のものを作り上げたいという強い情熱を持っており、その結果、プロフェッショナル同士の熱い想いがぶつかり合うプロジェクトとなりました」と梶川代表取締役社長は振り返る。


<概算費用>
総事業費:約830万円 そのうち補助金:約380万円
<補助金・事業の活用 スケジュール>
申請:2022年7月
交付決定:2022年9月
実績報告書:2024年3月上旬
額確定:2024年3月中旬
補助金受取:2024年3月下旬
<効果>
「安心して使える」と高評価。夢は東京中のホテルでリサイクルアメニティボトルのエコシステムを作ること

海外からの観光客の中には「サステナブルなものでないと使わない」と判断するお客様もいる。使いきりの個包装のボトルでありながら、リサイクルを実現したエコシステムの詳細はパッケージのQRコードを通して伝えている。こうした取り組みがお客様の安心と満足につながっている。また、リサイクルアメニティボトルは独自の配送ルートで回収され、再度リサイクルアメニティボトルとして利用される。
日本にはローカルブランドでありながら、海外ブランドのアメニティを取り入れているホテルやスパが数多くある。しかし、「東京らしさ」の体験にこだわった国際水準のラグジュアリーホテルやスパは、2024年現在、東京都内では「BELLUSTAR TOKYO, A Pan Pacific Hotel」、「SPA sunya」だけだろう。
「東京を含めて日本は、海外と比べて環境に配慮したエコシステムの意識がまだまだ低いと感じています。一方、日本にはサステナブルな商品やサービスがすでに存在しているので、こうしたものを広めていきたいですね。夢は環境配慮型のアメニティボトルを東京中のラグジュアリーホテルに広げて、エコシステムを作ることです」と、梶川代表取締役社長は未来への展望を話して締めくくった。