同社によると、もともと外国人客は、乗客全体の2割程度だったという。外国語への対応として、「どこへ行きますか」などの一般的な言葉を印刷した指差しボードを車内に用意していたが、日本語の話せない外国人客の多くは、スマートフォンの地図アプリなどで目的地を伝えてくるため、言葉の壁に日々困るような状況ではなかった。
2013年に東京 2020 オリンピック・パラリンピックの招致が決定して以降、訪日外国人の大幅増加が見込まれたことから、公共施設や交通機関の多言語対応は急ピッチで進められてきた。タクシーの多言語対応タブレット端末等の導入に対する補助金もその一環だ。同社の所属する東京無線協同組合の動きと足並みをそろえ、多言語翻訳機能のほか、QRコード決済などにも対応した端末の導入を決めた。2020年2月に補助金を申請した。
事例紹介
タクシー車内の多言語対応タブレット端末導入
~電子決済にも対応、外国人旅行客の満足度アップ
- 活用した支援メニュー(最新版)
- タクシー事業者向け多言語対応端末等導入補助事業(令和7年度)
事業者情報
- 企業名
- 代々木自動車株式会社(東京無線協同組合)
- 所在地
- 東京都渋谷区初台2-6-9
- HP
- https://www.yoyogi.co.jp/company

72台の車両を保有し、新宿エリアを中心にタクシーを運行している代々木自動車株式会社。同社は2020年、「タクシー事業者向け多言語対応端末等導入補助金」を活用し、車内に翻訳や電子決済などに対応した乗務員用タブレット端末を導入した。
<補助金・事業を利用したきっかけ>
東京2020大会へ向け、訪日外国人客対応が急務に
<補助金・事業を活用した取り組み>
7言語の同時翻訳機能 運転中も正確なコミュニケーションが可能に

タブレット端末を導入した2020年は、ちょうどセダンタイプの車両からバリアフリー車両への入れ替えを進めている最中だった。コロナ禍により納車の予定がずれ込んだため、端末を搭載予定だった車両が途中で変わってしまうこともあり、交付決定後も財団と密に連携を取るように心掛けた。
タブレット端末は、補助金を利用して設置した「乗務員用」(運転席と助手席の間に設置)と、別途導入した「後部座席用」(助手席のヘッドレスト後ろに設置)がある。2つの端末はBluetoothシステムで常に連携。乗客が使いたい言語を選び、端末に向かって話しかけると、乗務員側の端末には日本語字幕が表示され、音声も流れるシステムだ。英語・中国語・韓国語のほか、スペイン語・ドイツ語・フランス語・イタリア語の計7言語に対応している。指差しボードでは対応しきれなかった言語もカバーしており、外国人客との正確なコミュニケーションが可能になった。
支払いのときは、後部座席用タブレット端末で支払い方法を選ぶことができる。クレジットカード以外にも、交通系ICカードなどの電子マネーやQRコード決済に対応。乗務員側のタブレットには、アプリ配車機能や無線機能、カーナビ機能も搭載されている。多くの機能が1台のタブレットに集約されたことで、乗務員が運転に集中できる環境をつくることができた。
概算費用
助対象経費 531万円 そのうち補助金 192万円
補助金・事業の活用スケジュール
申請:2020年2月
交付決定:2020年3月
事業開始:2020年3月
保有車両59台に導入完了:2020年11月
実績報告提出:2020年11月
額確定:2021年2月
補助金受取:2021年2月
<効果>
支払方法も増え、乗客の満足度向上

乗客の使い慣れた言語で、多様な支払方法を選ぶことができるようになった。特にQRコード対応については、かねてから国内外問わず乗客からの要望が多かったといい、同社営業の小池清貴課長は「お客様の満足度向上につながったと思う」と話す。
水際対策の緩和もあり、外国人客は増加傾向が続く。今後はさらに使用機会が増える見込みだ。