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予約・客室管理システムや自動チェックイン機導入で業務効率化
~デジタル化でホテルの存続と安定経営の基盤構築に成功

活用した支援メニュー(最新版)
観光事業者のデジタル化促進事業(令和6年度)

事業者情報

企業名
ユニオン観光株式会社(神田ステーションホテル)
所在地
東京都千代田区鍛治町1-4-3
HP
神田ステーションホテルの外観

 ユニオン観光株式会社はビジネスホテル「神田ステーションホテル」と「坂のホテルトレティオ お茶の水」の2施設を運営している。同社は2022年6月から、「観光事業者のデジタル化促進事業補助金」を活用し、神田ステーションホテルに予約や客室の在庫を管理するオンラインシステムや自動チェックイン機などを導入。フロントなど各種業務の効率化に繋げ、人手不足の中にあっても安定した経営が可能なホテル作りを進めた。

<補助金・事業を利用したきっかけ>
従前の予約管理は手書き、料金設定も勘頼み デジタル化推進がホテル存続の道

 同ホテルの担当者によると、従前の予約管理業務は極めてアナログな方式だったという。予約は電話またはFAXで受け付け、従業員が手書きで情報を記録していた。OTA(旅行代理店)を通じて予約が入った際は、FAXかメールでその通知を確認し、オーバーブッキングを防ぐために別のOTA用の空室を減らすなどの段取りを全て手作業で行っていた。また、チェックイン時にも、92室ある客室の一覧表に宿泊客の名前を鉛筆で書いたり消したりして管理していたため、ミスも少なくなかったという。宿泊料金はその日の空室率などを基に決めていたが、従業員の勘に頼る部分が大きかったという。
 2020年以降のコロナ禍では2、3カ月間の休業を余儀なくされ、その後も1カ月当たり10万円程度の売り上げの月が続いた。アナログ方式による弊害への対応も求められる中、経営陣はデジタル化を進めて各種業務を効率化することがホテル存続の最善の道と考え、2022年6月に知己の司法書士の勧めで「観光事業者のデジタル化促進事業補助金」を申請した。

<補助金・事業を活用した取り組み>
自動チェックイン機や予約・客室管理システム、カードキーなどを導入 様々な業務を一気に効率化

 まず、2022年冬頃に全客室の鍵をディンプルキーから管理や持ち運びが容易なカードキーに取り換えた。それまで、宿泊客がエントランスを出入りする際にはフロントでの鍵の預けや受け取りが必要で、フロントスタッフが都度対応していた。カードキー導入後は、フロントスタッフが常駐していない夜間であってもエントランスに設置したカードキーリーダーで気兼ねなく出入りできるようになり、スタッフと宿泊客双方の負担が軽減されただけでなく、防犯や安全の面でも質的向上に繋がった。
 その後、2023年5月には、フロントに自動チェックイン機2台を導入。機器と連動するホテル管理システム(PMS)を通してチェックイン・アウトや客室清掃などの状況が可視化され、手書きでの情報更新が不要になり業務効率が改善した。また、自動チェックイン機と同じタイミングで、複数の宿泊予約サイトを一元的に管理し、予約受付や空室の在庫調整、料金設定などを自動で行うオンラインシステムも取り入れた。
 これらの機器やシステムの導入により、従来は2人必要だったフロントスタッフが1人でも業務可能になった。基本的にフロントには立たないホテル幹部でも、リモートで客室の稼働状況や料金を把握、管理できるようになり、業務の利便性が大きく向上した。
 ホテルのデジタル化を進める一方で、それまでのアナログ方式とは180度異なる大きな転換となったため、従業員の間には戸惑いも起こり、機器やシステムの操作に慣れるまでは相応の時間を要した。特に、チェックイン機の設定作業をはじめ、個別の細かい作業を習得するのに苦労したという。ホテルは1週間の研修期間を設け、代表者2人がまず研修を受けてから残りの従業員に教え、全員が操作方法を覚えられるようにした。また、高年齢層のビジネスマンなど、機器に不慣れな宿泊客へのサポートができるようなトレーニングも行った。

フロントに設置した自動チェックイン機
予約や空室在庫を管理するオンラインシステムの画面

<概算費用>

総事業費 約2,798 万円  そのうち補助金 約1,687万円

<補助金・事業の活用スケジュール>

申請:2022年6月
交付決定:2022年8月
自動チェックイン機、予約管理システムなど導入:2023年5月
実績報告提出:2023年6月上旬
額確定:2022年11月上旬
補助金受取:2023年11月下旬

<効果>
手作業のミスが無くなり業務効率が大幅に改善 過去最高の売り上げ達成も

 様々な設備を導入したことで、手作業による時間のロスや予約管理と精算時のミスといった弊害が無くなり、業務効率が大幅に改善した。宿泊料金も、オンラインシステムによってその時々の需要と供給に見合う価格が自動的に設定されるようになり、収益アップに繋がった。現在米国在住の同ホテル幹部の一人も、時差や場所に関係なく予約状況のチェックや空室管理ができるようになったため、利便性の向上を実感したという。また、チェックイン時の待ち時間は2台の自動チェックイン機の設置によって短縮し、宿泊客のストレスを軽減させることもできた。
 折しもインバウンドの復活や新型コロナの5類移行と重なったこともあってか、2023年5月頃からは宿泊客が爆発的に増え、同年10月には同ホテル開業以来最高となる売り上げを達成した。
 担当者は「コロナ禍でホテルは経営の危機にあったが、補助金の活用で前向きにデジタル化を進められ、業務の効率化や増収に繋がった」と振り返る。
 デジタル化の推進で安定的な経営への道を開いた神田ステーションホテル。担当者によると次の目標は、外国人観光客の取り込みだという。以前は年間で1人程度だった外国人宿泊客は、2023年12月現在では宿泊客全体の2、3割を占める。「ホテルは東京駅や秋葉原、神田明神、日本橋などの有名スポットに近い。周辺には飲食店も豊富にある。東京観光の拠点にしてもらえれば」と更なる需要の取り込みを目指している。