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インバウンド向けゲストハウスの庭やアプローチを改修
~集客力アップへ洗練された和モダン空間に

活用した支援メニュー(最新版)
外国人旅行者受入に係る経営活力向上支援事業補助金

事業者情報

企業名
株式会社フォースターズ・ドリーム(和ごころ)
所在地
東京都荒川区東日暮里6-34-9
HP
改修した庭の様子

 JR日暮里駅近くに建つ「和ごころ」は、全23室のゲストハウス風ホテルだ。交通アクセスが良いことに加え、上野や浅草といった主要観光地や、近年海外でも知名度が高まっている谷根千エリアにも近く、多くの外国人宿泊客で賑わう。同宿は2023年、「外国人旅行者受入に係る経営活力向上支援事業補助金」を活用し、中庭や玄関周りの改修などに取り組んだ。

<補助金・事業を利用したきっかけ>
殺風景だった庭や玄関周辺 「眺めがいまいち」の声も

 同宿がオープンしたのは2017年8月。訪日外国人をターゲットに南川清志代表取締役がデザインにこだわって新築した3階建ての施設は、インテリアが和モダンテイストで統一され、宿泊客からの評判も高かった。しかし南川代表によると、庭や玄関周辺のアプローチといったエクステリア部分が「理想と違った状態だった」という。幅11m、奥行き1.5mほどの細長い庭には植栽としてアジサイやナンテンなどが植えられていたが、株同士の間隔が空いていたこともあり、地面の土や足元のブロック塀がむき出しで寂しい印象だった。特に冬季はアジサイの葉が落ちて枯れたように見え、さらに殺風景になる。庭は1階客室に面しているため、宿泊客からは「部屋からの眺めがいまいち」という声もあった。アプローチ部分についても、地面を隠す程度のタマリュウしか植えられておらず気になっていたものの、日常の業務に忙しく、改修まで手が回らなかったという。
 宿泊客のほとんどを外国人が占めていたため、2020年以降のコロナ禍では大打撃を受けた。2022年10月の水際対策緩和によって宿泊客数が急回復する中、南川代表は「外国人旅行者受入に係る経営活力向上支援事業補助金」を知った。本格的なインバウンド回復にあたって新設された補助金で、集客力や収益性を高めるための設備投資を支援するものだ。もともと「宿泊機能を提供するだけでは大手ビジネスホテルなどの集客力に太刀打ちできない」との考えから、和モダンなインテリアや丁寧な接客に力を入れてきた南川代表は、エクステリア部分の改修を含めて更に「日本らしさ」を感じられるサービスを提供することで、より集客を見込めると感じたという。すぐに書類などの準備を始め、2023年3月に申請した。

改修前の庭の様子
改修前の玄関周辺

<補助金・事業を活用した取り組み>
閑静な竹林をイメージ インバウンド意識し洗練された空間へ

改修後の庭。路地のようなプライベート感を演出した
改修後の玄関周辺。夜はスポットライトが灯り、洗練された雰囲気に
改修後の玄関周辺
浴衣の無料レンタルサービスのPOP

 改修にあたっては「外国人の求める『日本らしさ』」を追求しようと、施工業者と何度もパース図をやり取りして、閑静な竹林のような空間を目指した。庭は外国人に人気のある表参道の根津美術館や京都・嵐山の竹林をイメージし、約1mおきに竹を植栽。地面を10cm程度かさ上げして黒い玉砂利を敷き詰め、むき出しの状態だったブロック塀も黒壁のように塗装して格調高く仕上げた。庭を貫くように御影石の石畳を敷くことで細長い庭の形状を際立たせ、路地のようなプライベート感も演出した。また、行燈のような照明も導入し、夜にも柔らかな光で眺めを楽しんでもらえるようにした。
 宿の顔となる玄関周辺にもこだわった。アプローチ部分のタイルを一部撤去して、植栽スペースを拡大。タマリュウが植えられていた奥行き20cmほどのスペースには、黒い玉砂利を敷いて竹を植えた。地面から竹一本一本を照らすスポットライトも配置し、洗練された雰囲気にした。宿の看板の下には背の低いナンテンを植えて、圧迫感を与えないように配慮した。
 日本らしさを感じてもらえる仕掛けとして、新たに浴衣レンタルのサービスにも取り組むことにした。浴衣を無料で貸し出す代わりに、SNSに投稿してもらうシステムだ。南川代表が以前、コンサルタントに「宿泊客自身が発信する情報はリアリティを感じてもらえるため効果的だ」と助言を受けたことから思いついたアイデアで、同宿の和モダンな雰囲気との相乗効果を生むのではないかと考えたという。
 呉服店と相談しながら、外国人に好まれそうな華やかな柄の浴衣と帯を6セット購入。着物を着たことがない外国人でも簡単に着られるよう、上下がセパレートになったものを選んだほか、着付け方法を説明する動画も提供してもらった。フロントに手作りのPOPを置いてPRしている。

<概算費用>

総事業費約332万円  そのうち補助金 200万円

<補助金・事業の活用スケジュール>

申請:2023年3月
交付決定:2023年5月
工事開始:2023年6月
工事終了:2023年7月上旬
実績報告提出:2023年7月下旬
額確定:2023年8月
補助金受取:2023年9月

<効果>
改修は高評価、浴衣レンタルサービスも順調な滑り出し

和ごころの外観

 2023年6月初めから1カ月程度で改修工事が終了。南川代表は「ほぼ理想形にできた。ゲストの満足度も上がったと思う」と声を弾ませる。大手宿泊予約サイトを通じて予約し、1階の客室に泊まった宿泊客から「部屋からの眺めがよかった」と口コミがついたこともあり、手応えを感じているという。同年12月から本格的にスタートした浴衣の無料レンタルサービスも既に数人が利用しており、暖かい時期にはさらに多くの利用を見込む。
 南川代表は、補助金について「事業計画通りに遂行する責任感をもらえた」と振り返る。必要性を感じながらも後回しになっていたエクステリアの改修が、交付決定によって必須業務へと変わったことで大きなモチベーションになったという。
 宿泊客には「口コミを見て来た」「以前宿泊した知人から勧められた」と話す人も多い。南川代表は、今回の事業で改修したエクステリアを含めた和モダンな空間づくりや浴衣無料レンタルサービスのほか「行き届いた清掃や接客など、単なる宿泊だけに留まらない滞在を提供することで、高い付加価値を生み出して他社との差別化をしていきたい」と意気込む。