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採用広告と資格取得支援で英語対応が可能なドライバーの確保と育成
~回復するインバウンド需要対応へ体制整備

活用した支援メニュー(最新版)
外国人旅行者受入に係る経営活力向上支援事業補助金

事業者情報

企業名
株式会社 日の丸リムジン
所在地
東京都文京区後楽1-1-8 日の丸自動車ビル
HP
日の丸リムジンのドライバーと社内英語資格の認定証書見本

 東京23区を中心に、ハイヤー・タクシー事業を展開する株式会社日の丸リムジン。空港送迎やビジネス、観光利用など多様なニーズに応え、国内開催のサミットや東京2020大会など国際的なイベントにおいて国内外のVIPの送迎を担うなどその業務は多岐に渡る。同社は2023年、「外国人旅行者受入に係る経営活力向上支援事業補助金」を活用し、英語でのアテンダントが可能なドライバーの募集と育成事業を行った。人材の採用や従業員の社内英語試験合格者の増加にも繋がったことで、本格的なインバウンド需要の回復に応える体制を整えた。

<補助金・事業を利用したきっかけ>
コロナ禍を経てインバウンド需要復活 人材募集と育成の再開に舵

 同社事業戦略本部統括兼経営企画管理部の坪井泰博常務執行役員によると、同社は訪日外国人の需要に対応するため30年以上に渡って英語での対応が可能なドライバーの育成をしてきた。ところが、コロナ禍で需要が急減し退職者が続出、社内で実施していた英語資格取得プログラムも中止を余儀なくされていたという。2022年秋以降は国内の水際対策の緩和でインバウンド需要が徐々に回復してきたため、再び英語対応が可能なドライバーや職員の募集と育成に取り組む方向に舵を切った。人手不足の解決策を求め様々な情報収集を進める中で、2023年1月に補助金を申請した。

<補助金・事業を活用した取り組み>
上位表示の工夫を施したウェブ広告 英語資格はランク別に研修や試験を実施

 募集事業では、補助金の交付決定後の2023年3月から7月末にかけて、Googleに検索連動型広告を掲載した。広告をクリックすると同社の採用ページに遷移する仕様で、英会話に堪能な、または英語の習得を希望するドライバーを募った。総務人事本部採用育成課の芹澤理香子課長によると、「ハイヤー 求人」というキーワードで検索した際、上位5位以内に表示されるように設定を工夫したという。
 育成事業は同年6月から7月下旬にかけて、都内3事業所で再開した社内の英語資格認定試験の取得支援研修が補助金の対象事業となり、講師への謝礼(交通費含む)を補助した。交付対象の事業としては7月末で終了したが、その後も研修自体は続いている。
 この社内資格は能力別にA、B、Cの3ランクに分かれており、基礎的な英会話が可能なレベルであるCランク取得のための研修からスタート。同ランクでは、挨拶や自己紹介をはじめ、車内の温度やトイレ休憩などの心遣い、東京や日本の気候、文化に関する基礎知識など様々な場面でのベーシックな英会話スキルが求められる。1コマ1時間の研修を10コマ受講し、音声教材を30時間聴講すると社内の認定試験を受験できる。講師は国賓・公賓の送迎などの担当経験があるベテランドライバーを社外から招聘した。研修はドライバーや職員の通常業務の合間を縫いながら行うため、スケジュール調整には苦労したという。
 Cランク取得から6か月以上経過し、事故・違反やアルコール検知、インバウンド利用客からの苦情などがなかった受験者には、大手英会話スクール主催の英語技能検定試験の受験資格が与えられる。同試験で250点以上に達すると、ワンランク上のBランク(TOEIC600点以上相当)の資格を得られる。さらに、Bランクを取得してから1年後に違反やクレームなどの問題がなく、且つ規定研修を受けた受験者は、事業所の推薦で再び同一の試験を受験でき、300点以上を取れればAランク(TOEIC800点以上相当)の有資格者になる仕組みだ。

検索結果で表示された募集広告(赤色枠内)
社内で実施している英語研修

<概算費用>

総事業費 約306万円  そのうち補助金 約161万円

<補助金・事業の活用スケジュール>

申請:2023年1月
交付決定:2023年2月
募集広告掲載、資格取得支援:2023年3月~7月
実績報告提出:2023年7月
額確定:2023年9月
補助金受取:2023年10月

<効果>
採用はV字回復 試験合格者も続出

 広告掲載と育成事業の両方で、顕著な効果が見られた。
 募集広告は毎月平均1,000回以上のクリックがあった。広告を掲載した4カ月余りの期間に30人以上から応募があり、英語での対応が可能なドライバーについては計14人の採用につながった。芹澤課長は「応募、採用人数ともにコロナ禍以前と同水準まで戻った。」と手ごたえを実感している。
 研修と試験には新規入社のドライバーに加え、コロナ禍で参加できなかったドライバーや職員も積極的に受講、受験した。6月から9月末までにABC各ランクで計67人が受講し、うち33人が各ランクの試験に合格した。
 坪井常務は「補助金がなければ、ここまで一気に多数の従業員が受講する規模の研修はできなかった。多くのドライバーや職員の受講に繋がり、英語習得の意識付けができたのは大きな成果だ」と振り返る。ランクが上がると給与アップにも繋がるため、多くの従業員が士気を維持しながらレベルアップを目指し、日々英語の勉強に励んでいるという。
 同社にはこのほか、東京の地理や歴史などの知識を問う「東京シティガイド検定」の合格者や、ドライバーがガイドをしながら都内の観光名所を巡る「東京観光タクシードライバー」の認定者、訪日外国人らを対象に多言語で東京の通訳案内が可能な「東京都地域通訳案内士」などもいる。坪井常務は「このような有資格者を増やすことが、都内のインバウンド対応において非常に重要だ」と言葉に力を込める。