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民宿の自家用居室をコワーキングスペースとテレワークルームに
~ワーケーション需要を取り込む

活用した支援メニュー(最新版)
宿泊施設活用促進補助金

事業者情報

企業名
寿美礼丸
所在地
東京都神津島村1553
HP
寿美礼丸の外観

 東京都心から南へ約180kmの神津島にある「寿美礼丸」は、1996年に開業した全6部屋の民宿。観光客に加え、行政機関や建設業者などのビジネスでの利用も多い。同宿は2022年秋、「宿泊施設活用促進補助金」を活用し、自家用の居室2部屋をそれぞれコワーキングスペースとテレワーク仕様の客室に改修する工事を実施した。使い勝手の良い空間が仕事で訪れた宿泊客を中心に好評で、ワーケーション需要の取り込みを狙う。

<補助金・事業を利用したきっかけ>
方針転換で増加したビジネス需要 ネット環境完備したスペースと客室の整備へ

 女将の石野田ゆかり氏によると、同宿は元々釣り船の利用客向けの宿で、一般の観光客向けではなかったという。ただ、泊まり込みで釣りをする客は常に一定数いるわけではないため、6年ほど前からターゲットを観光客へとシフト。そうした中、行政機関や建設業、IT関係などのビジネス客の利用が徐々に増え始めた。仕事で泊まりに来る利用客の中には部屋でPCを使って作業をする客もいたが、そこでネックとなったのが宿の作業空間としての環境だ。宿ではWi-fiを整備しているが、機器を1階に設置しており、客室がある2階には電波が届かない状態だった。また、PC作業に適したデスクや椅子などの備品も特段用意していなかった。
 石野田氏が改修工事を思い立ったきっかけは、3人で島を訪れたビジネス客のうち2人は同宿に宿泊したが、残る1人はPC作業に適した環境を求めて別の宿に宿泊したという話を耳にしたことだった。コワーキングスペースやテレワークルームを整備すれば、既存のビジネス客の満足度を上げるだけでなく、仕事をしながら長期滞在するワーケーション客の需要も取り込めると考えた。
 神津島観光協会を通して補助金の存在を知り、2022年9月に申請した。

<補助金・事業を活用した取り組み>
寝室を改造したコワーキングスペースに、使い勝手の良いテレワークルーム ドリンクバーも

 コワーキングスペースは、元々8帖あった自宅スペースの寝室を改修して整備した。照明の設置や壁と床の張り替えを行い、窓際にカウンターを設置して山や海を眺めながら作業や交流ができるようにした。コンセントから離れているテーブルには、延長コードも用意。また、このスペースにはコーヒーやお茶で気軽にリフレッシュできるようドリンクバーも設け、長期滞在するワーケーション客らが快適に過ごせるよう工夫を凝らした。
 テレワークルームは、かつて6帖あった自家用の部屋を改修、拡張して7帖の客室にした。部屋にはソファベッドと昇降式テーブルを設け、PC作業や就寝の際に好みに応じた使い方ができるよう工夫した。それまで5部屋だった客室は、6部屋に増えた。
 改修工事は2022年11月に実施し、同月末には利用を開始した。

自宅の寝室を改造したコワーキングスペース
コーヒーや茶などを提供するドリンクバー
高さを調整できるテーブルを導入したテレワークルーム

<概算費用> 

総事業費 約628万円  そのうち補助金 約423万円

<補助金・事業の活用スケジュール>

申請:2022年9月
交付決定:2022年10月
改修工事実施:2022年11月
実績報告提出:2023年4月
額確定:2023年5月
補助金受取:2023年6月

<効果>
ビジネス客、観光客の双方から好評 リピーターも獲得

 テレワークルームは、宿でPC作業をする客に好評だ。他の部屋での作業は床に座って身をかがめるような姿勢になるため、高さを自在に変えられる昇降式テーブルがある部屋は使い勝手が段違いだという。宿泊客からは、テレワークルーム以外の客室にも昇降式テーブルの設置を要望されることがあり、石野田氏はビジネス・ワーケーション需要の根強さを改めて実感している。
 コワーキングスペースはビジネス客の利用に加え、友人同士などで飲み物片手に歓談する観光客の姿も見られるようになり、一定の人気を得ている。
 宿泊客のニーズを着実に宿の環境に反映させてきた寿美礼丸。改修工事実施後はリピーターも増え、その効果を実感している石野田氏は「自力ではここまでできなかった。補助金があったからこそ」と振り返る。今後もワーケーションを中心とした需要をコンスタントに取り込み続けることで、経営の安定化を目指している。