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タクシーの運行情報や給与計算を一括管理
~クラウドシステム導入で業務効率が大幅アップ

活用した支援メニュー(最新版)
アドバイザーを活用した観光事業者支援事業 (令和6年度)

事業者情報

企業名
荏原交通株式会社
所在地
東京都品川区荏原6-12-12
HP
導入したクラウドシステムで業務を行う様子

 260台の車両を保有し、品川・目黒・大田・世田谷の4区を中心にタクシーを運行している荏原交通株式会社。同社は2023年3月、「アドバイザーを活用した観光事業者支援事業補助金」を活用し、タクシーの運行情報や売上、乗務員の給与などの情報を一括管理できるクラウドシステムを導入した。

<補助金・事業を利用したきっかけ>
キャッシュレス決済多様化で業務量増大 パンク寸前

 同社では、日々膨大な運行データを収集・検証している。車両に搭載されているタクシーメーターはGPSと連動しており、乗客を乗せた際の走行距離や日時、運賃などを記録。一台一台から集めたデータは全て運行情報として専用システムに入力・集計し、毎日の売上などを管理・確認する。
 一方、給与計算には、別の専用システムを使う必要があった。乗務員の給与は基本給と歩合給で構成されることに加え、勤務時間が変則的で、算定が非常に複雑であるためだ。2つのシステムは連携しておらず、運行情報システムで算出したデータを、給与計算システムへ逐一入力し直す手間が掛かっていたが、辛うじて運用できていたという。ところが、キャッシュレス決済の多様化によって状況が大きく変わった。
 キャッシュレス決済はコロナ禍以降、現金の授受に伴う他人との接触を減らす観点から広く浸透。同社のタクシーにも乗客からのニーズに応える形で、クレジットカードやQRコード決済、タッチ決済など、多彩な支払方法に対応する端末が搭載されており、キャッシュレスでの支払いは現在、売上の6割ほどに及ぶ。同社では保有車両が多いため、支払方法別に合計額を算出するのは大きな手間になる。また、決済システムの運営会社ごとにそれぞれ窓口や照会方法が違うため、支払方法が増えると売上管理や確認の手間が膨れ上がってしまう。同社総務人事部の前橋道輝次長は「管理部門の業務量がパンクしつつあった」と振り返る。
 業務効率化の方法を模索していた2022年8月、運行情報管理システムの機能が大幅に充実し、給与計算までをクラウドシステムで包括的に担えるようになっていることを知った。それを受けて社内では、補助金を活用してシステムを一つにまとめる案が浮上。専門家に助言を求めたところ「事務作業の軽減によって、その分の労力を接客マナー講習や安全運転講習などに注ぐことができるようになる」と、業務効率化のメリットを説かれた。補助金を活用してシステムを一つにまとめることにし、同補助金を申請した。

<補助金・事業を活用した取り組み>
包括システムで一括管理 リアルタイムで状況を可視化

クラウドシステムを起動させた様子

 2023年3月、機能が拡充した新システムを導入。元々使用してきた給与計算システムが更新時期を迎えるまでの3カ月間は、2つのシステムを併用して検証を重ねた。給与算出の計算式や、勤務体系などは会社によって異なるため、同社専用に何度もプログラムを微修正し、すり合わせ作業を行った。
 それまで紙ベースで行ってきた、乗務員と車両の稼働状況がシステム上でリアルタイムに可視化されるため、車両を点検や修理に出す際に代替車両を探してあてがうといった作業も簡単にできるようになった。また、使用方法を学ぶため、システム会社のスタッフを講師に招いて社内研修も実施した。パソコンでの作業に消極的だった従業員も、利便性の高さにすぐに順応できたという。

<概算費用>

総事業費約290万円  そのうち補助金約198万円

<補助金・事業の活用スケジュール>

アドバイザーからの助言を受ける:2022年8月
申請:2022年10月上旬
交付決定:2022年10月下旬
新システム導入:2023年3月
実績報告提出:2023年5月
額確定:2023年6月上旬
補助金受取:2023年6月下旬

<効果>
事務負担が大幅ダウン 浮いた時間で社内講習、サービス向上へ

荏原交通株式会社 総務人事部
前橋 道輝 次長

 新システム導入と同時に車載タクシーメーターを別途入れ替え、支払方法を全て記録できるようにしたこともあり、支払方法別に合計額を算出する手間が大きく減った。前橋次長は、「管理部門の従業員に時間的余裕が生まれたことで、乗務員とのコミュニケーションが活発になった」と話す。乗務員向けに安全運転や接遇スキルの向上、車いすを利用する乗客のための介助を学ぶ講習会なども、営業所ごとに開催できるようになったという。新システムは、毎日の運行データを分析してスピードを出しすぎる傾向のある乗務員を割り出す機能も備えており、事故を未然に防ぐために個別に安全運転を呼びかけることも可能になった。業務効率化の恩恵がサービス向上へとつながっている。
 運転免許証の更新時期や車検時期、ETCカードの期限など、厳密な日付管理が必要なものをリマインド通知する機能もある。特に期限が長いものは一旦紙でファイリングするとそのまま忘れてしまうリスクがあり、それぞれの担当者だけが更新時期を把握しているというケースも多く、直前になって日程調整などに追われることもしばしばあった。クラウド化によって部署を跨いで多くの従業員が通知内容を把握できるようになり、ミスを大幅に減らせるようになった。
 最近では、営業所から「こんな機能があればもっと便利になる」といった要望も上がってくるようになった。前橋次長は、管理部門にとっての大きな山場となる年末調整を見据えながら、「活用方法によっては更に業務を効率化できると思う。接遇スキルの向上に力を入れているので、より一層そちらへマンパワーを振り向けていきたい」と語る。