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半地下宴会場へ向かう階段に車いすリフトを整備
~利用者とスタッフ、双方の負担軽減に

活用した支援メニュー(最新版)
宿泊施設バリアフリー化支援補助金

事業者情報

企業名
株式会社ニュー・オータニ(ホテルニューオータニ)
所在地
東京都千代田区紀尾井町4-1
HP
半地下にある宴会場へ向かう階段に設置された車いすリフト

 1964年の東京オリンピックを前に「日本初の高層ホテル」として千代田区紀尾井町に開館したホテルニューオータニ。現在の総客室数は1400を超え、国内有数の国際ホテルとして約60年の歴史を持つ。同館は2020年、「宿泊施設バリアフリー化支援補助金」を利用して、エレベーターのない宴会場へアクセスするための車いすリフトを整備した。

<補助金・事業を利用したきっかけ>
階段10段をスタッフ4人で抱えて昇降 利用者にも現場にも負担に

 3棟の建物からなる同館には、大小合わせて33カ所の宴会場がある。そのうちの1つ「翠鳳(すいほう)の間」は、併設のテラスへ出ることができる開放的なつくりと、邸宅風のアットホームな雰囲気から、結婚披露宴やセミナーなどで人気が高い。しかしエレベーターのない半地下に位置しており、車いす利用者にとって大きなネックとなっていた。
 宴会場のある半地下と1階との高低差は1.7mほど。幅約5mの階段が10段あり、この階段を通じてしかアクセスができなかった。この部屋に車いす利用者が出入りする際は、ホテルスタッフが4人がかりで車いすごと抱えて階段を昇り降りする必要があった。車いすを使う祖父母や友人を持つカップルが、この部屋での披露宴を敬遠するケースもあった。
 同ホテルは2010年から、東京観光財団を通じて多くの補助金を活用し、バリアフリートイレなどの施設整備をしてきた。車いすリフトが補助の対象となることも過去の申請時に知っていたため、利用を決めた。

<補助金・事業を活用した取り組み>
車いすリフト昇降 スタッフがボタンひとつで操作可能に

 事業にあたっての準備として、建物の構造上、リフトが設置可能かどうかを確かめることが必要だった。もともと設置してあった手すりに加えて、リフトを支える基礎を打てばレールを取り付けられることがわかり、福祉機器メーカーのリフト導入を決定。申請も施工もスムーズに進み、補助金の交付決定から3カ月ほどで完成した。
 実際に利用する際は、宴会場スタッフがシステムを起動させる。スタッフのボタン操作で跳ね上げて収納してあるリフトの床板が降りてくると、車いすのまま乗り込むことができる。落下防止のバーが自動で降り、階段を歩いてゆっくり昇り降りする程度のスピードでレールに沿って動く。10秒ほどで目的階に到着し、障害物などを感知すると自動停止する機能もついている。スタッフはリフトのボタン操作をする1人だけで済む。
 施設整備を担当するファシリティマネージメント部ファシリティマネージメント課の大髙恵太課長は、車いすリフトについて「補助金が仮に出なかったとしても、いずれ整備しなければならなかった施設だと思う」としたうえで、「『補助金で一部費用が支援される』というのが強力な後押しになり、設置時期を早めることができた」と振り返る。

概算費用

補助金額 640万円

補助金の活用スケジュール

計画:2020年2月
申請:2020年3月
交付決定:2020年8月
事業実施:2020年8月
工事終了:2020年10月
実績報告提出:2020年12月
額確定:2021年1月
補助金受取:2021年1月

<効果>
バリアフリー化で利用者に安心感 宴会場の成約率もアップ

 車いすリフト設置によって対応にあたるスタッフの数が4人から1人に減り、負担は大幅に軽減された。設置前は現場スタッフ側から「人を乗せたまま車いすを抱えるのは神経を使う」という声が多く上がり、利用者側からは「不安定で怖い」といった声があったというが、こうした不満がなくなり、すこぶる好評だという。
 「翠鳳の間」の受注率も伸びている。検討段階で車いす利用者でもスムーズに出入りできることを確認すると「ゲストを安心して呼べる」と成約につながった例もあった。
 築60年近い同館は、これまでもスロープや手すりを増設するなどして、段階的にバリアフリー化に取り組んできた。しかし今もまだ宴会場のトイレや客室の風呂場には段差があり、不便を訴える声も届く。大髙課長は「今後も時代のニーズにあわせて柔軟に対応・判断したい」と、バリアフリー化への意欲を語る。