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キャンプ場に多摩産ヒノキを使ったバンガロー建設
~地元の産業振興へ貢献

活用した支援メニュー(最新版)
宿泊施設活用促進補助金

事業者情報

企業名
株式会社do-mo(自然人村)
所在地
東京都あきる野市深沢198
HP
建材に多摩産木材を使用したバンガロー「ARGO」

 都心から1時間、自然豊かなあきる野市五日市エリアで飲食店などの事業を展開する株式会社do-moは、2016年に創業した。地元食材にこだわったレストランや、キャンプ場「自然人村」を運営するほか、キャンプ場近くのあじさいの名所「南沢あじさい山」の管理も手掛ける。
 同社は2022年、「宿泊施設活用促進補助金」を活用し、キャンプ場「自然人村」内に多摩産の木材を使ったバンガロー(同キャンプ場では「タイニーハウス」とも呼ぶ)を建設した。

<補助金・事業を利用したきっかけ>
バンガロー建設に多摩産木材を使用 「地産地消」で地元を元気に

 同キャンプ場の敷地は3000平米ほど。秋川の支流・三内川が敷地内を大きく蛇行して流れ、渓流沿いではバーベキューを楽しむことができる。渓流を挟んで東側はテントを持ち込んでキャンプができるテントエリアで、西側はバンガロー8棟が立ち並ぶバンガローサイトだ。渓流を水風呂代わりにしたサウナやワーケーション設備もあり、人気を集めている。野外ライブのできる常設ステージでは年数回、音楽フェスも開かれる。
 同社の髙水健代表取締役は、2020年春に父から同キャンプ場を事業継承して以降、老朽化していたバンガローの建て替えを順次進めてきた。同社発祥の地である、あきる野市に恩返しをしたいという信念から、新しい建物の建材には一貫して多摩産木材を使用し、建設工事も地元業者に発注。一連のバンガロー建設について髙水代表は、地元の産業振興の側面以外に、木材運搬などに伴うコストやCO2排出量を減らせる点で、SDGsの観点からも意義深いと語る。「今後、SDGsへの配慮は、消費行動を左右する重要な要素になる」として、「こうした『地産地消』はキャンプ場のブランディングにもつながる」と話す。
 髙水代表が宿泊施設活用促進補助金の存在を知ったのは、2022年秋ごろ。それまでも建て替えにあたりいくつかの補助金を活用してきたため、東京観光産業ワンストップ支援センターの相談員ともたびたび連絡を取り合う機会があった。バンガロー建設について相談したところ、同補助金を紹介されたという。内容を相談しながら書類をそろえ、「宿泊を通じて東京の魅力を発信する事業」として、2022年末に申請書を提出した。

<補助金・事業を活用した取り組み>
大きな窓で開放感演出 自然と一体に

「ARGO」の室内

 事業が採択されたのは2023年2月。同キャンプ場にとってはオフシーズンである冬期に工事をすることができた。建材の手配も建設工事も、地元の事業者へ発注した。
 補助金を活用して整備したのは「ARGO(アルゴ)」というバンガローだ。建材として用いたのは多摩産のヒノキで、周囲の自然と調和した外観になった。17平米の室内は、温もりを感じられる土壁で仕上げられている。部屋上部に配置した大きなガラス窓からは光が差し込み、開放感を味わうことができる。
 室内に設置してあるのは、ダブルベッドが3台と小ぶりな棚のみ。必要最小限の設備にとどめ、自然の荒々しさや生命力を体感してもらう狙いだ。テラスではコットテント(簡易ベッドとテントが一体になったもの)を張ることもできる。
 設計図どおりに施工したところ、山の斜面に建っていることから、入口へつながる階段の勾配が急峻すぎることが発覚。安全面に問題があると判断し、階段を制作し直した。提出した計画や見積もりからずれてしまったため、財団と綿密に連絡を取る必要があったという。
 3カ月ほどで工事を終え、5月の大型連休から稼働を始めた。

概算費用

総事業費 約770万円 うち補助金 約500万円

補助金・事業の活用スケジュール

申請:2022年11月
交付決定:2022年12月
実績報告提出:2023年4月
額確定:2023年6月
補助金受取:2023年7月

<効果>
夏場はフル稼働「いい滑り出しができた」

株式会社do-mo 髙水 健 代表取締役

 稼働を開始した5月以降、ARGOは週末は常に予約で埋まり、キャンプのハイシーズンである7~9月はフル稼働した。髙水代表は「いい滑り出しができた」と手ごたえを語る。利用者からは「シンプルな空間で、自然に浸かるような感覚になれる」と好評だという。今後はオンライン旅行会社(OTA)を活用し、平日の稼働率を上げていく計画だ。
 事業継承から3年で多くのバンガローを建て替えた髙水代表は「ここまでのスピード感で建て替えを進められたのは補助金のおかげ。本当に助けられた」と振り返る。
 地元ならではの素材を使い、地元の職人の手で建設された点を打ち出すことは、あきる野市の魅力や産業のPRにつながり、SDGsへの配慮もアピールできる。髙水代表は「単なるキャンプ場にとどまらない、多様な役割を担える場所にしていきたい」と意欲を見せる。