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川床で地域の名産品提供
~江戸時代のにぎわい再現へ、ステージなどのイベント開催

活用した支援メニュー(最新版)
水辺のにぎわい創出事業費助成金(令和7年度)

事業者情報

企業名
一般社団法人東京北区観光協会
所在地
東京都北区王子1-11-1
HP
音無親水公園で開催した川床イベントの様子

 石神井川の旧流路沿いに整備された音無親水公園は、川に枝垂れるサクラやモミジなどの美しい景観が有名で、日本の都市公園100選にも選ばれている。JR・東京メトロの王子駅からほど近く、夏場には水遊びをする親子連れでにぎわう。
 東京北区観光協会は2022年9月、「水辺のにぎわい創出事業費助成金」を活用し、川床を設置して地域の名産品を提供したり日本舞踊のステージなどを行うイベント「音無かわどこかふぇ」を開催した。

<補助金・事業を利用したきっかけ>
地域の歴史と伝統を活かし 浮世絵のにぎわい再現へ

行楽地としてにぎわう様子が描かれている。「江戸高名会亭尽(えどこうめいかいていづくし)」歌川広重作、北区飛鳥山博物館所蔵
歴史を感じるデザインの音無親水公園
 

 同協会は、各種補助金を活用してライトアップなどの公共空間を活用した事業を手掛けているため、東京観光財団からのプレスリリースには日常的に目を通している。2022年5月には、荒川・岩淵水門周辺の河川敷でキャンプイベントを開催する際、「新たな水辺のにぎわいを創出するイベント事業」として同助成金を活用したことがあり、今回の事業は同協会としては2度目の申請だった。
 音無親水公園のある北区王子エリアは、歌川広重の連作浮世絵「名所江戸百景」の題材に何度も取り上げられるなど、古くから風光明媚な行楽地として栄えてきた。石神井川沿いに軒を連ねた茶店の窓から、観光客が川を眺めながら食事を楽しむ様子も描かれている。同公園近くの飛鳥山公園には日本資本主義の父・渋沢栄一が晩年を過ごした邸宅が残るほか、王子神社、王子稲荷神社では「狐の行列」などの伝統行事も根付く。音無親水公園も、苔むした石垣や水車など、地域の歴史を色濃く反映したデザインが特徴だ。
 公園近くにはJR・東京メトロの王子駅があり、駅利用者が頻繁に通り過ぎる一方、園内で過ごす人は多くない。また、水遊びシーズンである夏や、ライトアップイベントを行う花見や紅葉の時期などは一時的ににぎわうものの、それ以外の時期に訪れる人も少なかった。公園のデザインや地域の歴史を活かしつつ新たなにぎわいを創出する起爆剤として、同助成金を活用して川床を柱としたイベントを催すことにした。

<補助金・事業を活用した取り組み>
初の試みに苦労も 地域の協力でイベント実現

設営した川床の様子。6つのテーブルを設置し、定員は12人だった
 
当日提供した玉子焼きやあんみつなどの軽食。川床でイートインする人のほか、テイクアウトする人もいた

 川の上に張り出して設営した座敷で料理やお茶を楽しむ川床は、京都の夏の風物詩として有名だ。涼しげなせせらぎとみやびな雰囲気で人気があり、同協会内でも以前から「いつか区内でやってみたい」と話題に上がっていたという。イベント開催にあたり、公園の歴史的なデザインを活かすアイデアとして川床が再浮上。同協会のシェフ日七氏は「川幅数メートルの親水公園で本当に川床ができるのか、クオリティの高いものができるのか、初めてのことなので不安もあった」というが、ネット上などで川床の写真を集めてイメージを固めていった。他イベントでも取引のあった都内のイベント設営会社に依頼したところ、会社側は川床を設営したことがなく、安全管理などの面で苦労したという。現場は岩がむき出しで足場が悪く、資材を新たに組み直す必要があったため、一緒に何度も現場に足を運んだ。設営した川床の広さは定員12人で15平米ほど。互いのイメージを細かくすり合わせた甲斐もあり「想定以上の素晴らしいものができた」(シェフ氏)。
 イベントの運営は、地元の広告代理店へ委託。代理店が当日提供する飲食物の手配などにあたった。江戸時代から続き落語や浮世絵の舞台にもなった料亭で、現在は玉子焼き店として営業する「扇屋」や、130年余の歴史を持つ和菓子店「石鍋商店」といった地域の老舗に協力を求めたところ、浮世絵のにぎわい再現というイベントの趣旨に前向きだったといい、買い取った商品を現地で販売する合意を4店舗から取り付けることができた。当日は、川床でのイートインとテイクアウトで玉子焼きやあんみつなどを提供した。
 和の雰囲気をさらに感じてもらう仕掛けとして、ステージも開催した。地元の人脈をたどり、都内で日本舞踊、巫女舞などの活動をする2団体の紹介を受けて、演舞を依頼。川岸に設けたステージで、それぞれのグループが30分の演舞を1日に2、3本ずつ披露した。
 PRチラシを制作し区内の掲示板などに掲出したほか、同協会のWEBサイトやSNSなどでイベントを告知した。

概算費用

総事業費200万円のうち補助金約90万円

補助金・事業の活用スケジュール

申請:2022年6月
交付決定:2022年8月上旬
イベント開催:2022年9月10日~11日(9日は関係者を招いたプレイベントを開催)
実績報告提出:2022年10月
額確定:2022年10月
補助金受取:2022年11月

<効果>
来場者から好評 観光資源にまで育てたい

東京北区観光協会のシェフ日七氏

 イベント期間中、園内で立ち止まってステージを見た人なども含めると、来場者は普段より格段に多く5,500人にのぼった。川床は席代500円30分入れ替え制としたところ、182人が利用した。飲食物などを購入した人は314人で、30万円以上を売り上げた。会場で実施したアンケートでは、ほとんどの人が「公園の雰囲気と川床がマッチしていた」と回答。シェフ氏によると、同協会にはイベントから約1年経過した今夏にも「今年は川床のイベントはないのか」という問い合わせが複数寄せられ、多くの人に好意的に受け止められたと感じているという。
 同協会では、11月にも川床を活用したイベントを開催する予定。2022年よりも多くの人に訪れてもらおうと、期間を延ばす方向で調整中だ。シェフ氏は「いずれ地域の観光資源として実装するまで育てていきたい」と意気込む。