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ハイヤーや日本文化体験ツアーの英文予約サイト開設
~富裕層向けに自社商品を魅力的に発信する基盤を整備

活用した支援メニュー(最新版)
外国人旅行者受入に係る経営活力向上支援事業補助金

事業者情報

企業名
木の子交通株式会社
所在地
羽田空港営業所 東京都大田区羽田5-3-1
HP
木の子交通の予約機能付き英文サイト

 木の子交通株式会社は主に国内外の富裕層をターゲットに、2018年から都内を中心としたハイヤー事業をはじめ、全国各地での日本文化体験ツアーなどを展開している。同社は2023年2月、「外国人旅行者受入に係る経営活力向上支援事業補助金」を活用し、各種サービスの予約機能を備えた英文サイトを制作、同年12月に公開した。英語圏を中心とする富裕層のインバウンドを意識し、ワンランク上の旅を提供するための情報発信の基盤を整えた。

<補助金・事業を利用したきっかけ>
英語圏の富裕層へのアプローチ まずは情報発信から

 同社ではハイヤーによる空港送迎に加え、訪日富裕層向けに様々な日本文化体験プログラムを提供してきた。北陸地方で酒造見学と日本酒のテイスティングなどが楽しめるツアーや、都内の高級寿司店での寿司作り教室、テレビドラマの撮影でも使われたという高級着物の着付け体験など、40近いプログラムをパッケージツアーとして用意している。ツアーでは大学教授や施設・店舗のオーナー、様々な分野の職人などが講師や案内人を務め、旅を楽しみつつ日本文化への学びを深められる本格志向の内容が売りだ。
 同社の高野嘉琦取締役によると、コロナ禍以前の利用客は中国人観光客が約9割を占めていたが、2023年12月現在では5割程度だという。そのほか、欧米とシンガポールが3割、残りの2割は日本人客が占める。高野取締役はコロナ禍に突入する2020年以前から、英語圏の利用客を増やしたいと考えていた。そのため、旅行代理店への訪問営業に力を入れ、代理店が参加する海外でのBtoBの商談会などに積極的に出ていたが、「旅費や参加費などの経費が掛かった割に成果は芳しくなかった」と振り返る。2020年に入り、当時ドライバーを務めていた同社幹部から「(営業の)やり方が古い。会社を訪問するよりホームページを作ろう」と提案があり、同年冬に、それまで設けていなかった自社サイトをまずは日本語で開設した。翌年夏頃には英文サイトも制作したが、既存のフォーマットを利用した簡易的な構造で、予約もメールで問い合わせる仕組みとなっていて機能性や訴求力に欠けていたためか、予約や問い合わせの増加には繋がらなかった。
 2022年9月、英語に堪能な社員が入社したことで、高野取締役はインバウンド復活後に英語圏の利用客を取り込む考えを一層強くした。そこでまずは情報発信の基盤を充実させようと、英文サイトの刷新を決めた。
 補助金については、東京観光産業ワンストップ支援センターのマイページに登録し、設定した業種や事業に関連したお知らせメールが届くようにしていたため、いち早く「外国人旅行者受入に係る経営活力向上支援事業補助金」について知ることができた。申請は2023年2月に行った。

<補助金・事業を活用した取り組み>
各種予約機能に加え、高級感と企業の個性を両立させるデザインを追求

 サイトのリニューアルに当たり、機能面ではハイヤーや日本文化体験ツアーに加えて、都内や箱根、京都などの高級旅館・ホテルの予約ができるシステムを整えた。
 高野取締役が特にこだわったのが、サイトのイメージを左右するデザインだ。「サイトに高級感を持たせないと、いくら商品をPRしても宣伝効果は高くならない」と考え、富裕層へのアピールに繋がるような高級感と社名の由来となった「キノコ」が与える可愛らしいイメージが調和するサイトを目指し、デザインや制作を担当した開発会社と試行錯誤を重ねた。ページの背景にはシンプルなデザインのキノコをはじめ、日本らしい松の木のイラストや伝統的な装飾文様をあしらうことで、会社の個性や格調高い和の雰囲気を強く意識した。フォントのサイズも、見やすさとデザイン性を両立できるよう念入りに考えた。
 日本文化体験ツアーの紹介に際しては、肖像権の関係で講師や案内人の顔写真を掲載するための許可を得るのに苦労したという。特に職人は旅行・観光業者ではないため、顔写真の公開に難色を示されることもあった。
 見応えのあるサイト作りのため、開発会社とは毎週のように打ち合わせを行った。高野取締役は、「自分たちがサイトに求めたイメージと、実際の仕上がりとの差を埋めていくのが難しかった」と話す。実績報告の提出以降も細かな修正や調整を何度も繰り返し、極力妥協せず理想の形に近づけた。
 半年以上の期間をかけて完成したサイトは、2023年12月上旬に公開を始めた。

鮮やかな画像が目を引く英文サイトのトップページ
サイトの背景に設定したキノコのイラストや装飾文様

<概算費用>

総事業費 341万円  そのうち補助金 200万円

<補助金・事業の活用スケジュール>

申請:2023年2月
交付決定:2023年4月
実績報告提出:2023年9月
額確定:2023年10月
補助金受取:2023月10月

<効果>
試行錯誤を経て完成した新サイト 訪日富裕層や旅行代理店の反応に期待大

木の子交通株式会社
高野 嘉琦 取締役

 高野取締役は、新しい英文サイトに大きな期待を寄せている。訪日富裕層へのアピールはもちろん、旅行代理店などへの営業活動の際にも大いに効果を発揮するとみている。「デザインや機能が整ったサイトがあれば、口頭のみで説明するより効率が良いのはもちろん、代理店にも自信を持って会社や商品を紹介できる」と前向きだ。今後はGoogle広告も掲出する予定で、「海外の商談会まで赴かなくても、自社オフィスにいるだけでお客様から問い合わせが来るのが楽しみ」と声を弾ませる。
 補助金の意義については、「コロナ禍では経営に苦しんだため、3分の2の補助が出るのはとても大きい。安心してサイトのクオリティ向上に専念できた」と振り返った。
 トライ&エラーの連続の末に日の目を見た英文サイト。高野取締役は、「日本と木の子交通のファンを増やしたい」と目標を語る。