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ワークフローシステムで社内申請をデジタル化
~ホテルの接客サービス向上へ 大幅時短を実現

活用した支援メニュー(最新版)
アドバイザーを活用した観光事業者支援事業 (令和6年度)

事業者情報

企業名
非公開
導入したワークフローシステムのキャプチャ

 2017年設立のホテル運営会社(社名非公開)は、都内と関西圏でホテルを展開している。
 同社では2023年、「アドバイザーを活用した観光事業者支援事業補助金」を活用してワークフローシステムを導入し、稟議などの社内申請をデジタル化した。ホテル現場スタッフの業務負担を減らすことで、接客サービスにより注力できる環境を整えた。

<補助金・事業を利用したきっかけ>
ホテル数増加で稟議書倍増 現場での申請から本社での最終承認までのタイムロスが課題に

 同社はコロナ禍の中でも新規のホテルを開業し、独自の魅力を打ち出してファンを増やしてきた。運営するホテルが増えたことで、東京にある本社と各ホテルの現場との間で交わされてきた書類が倍増。特に、月に15本ほどある稟議書のやり取りに課題が出てきたという。稟議は各ホテルでアルバイト社員の採用から備品の購入に至るまで、一定以上の投資が発生する度に各ホテルで起案される。稟議資料のデータ一式がメールで本社部門へ送られた後、書類を回付して上層部の承認を得る必要があるが、役員の出張が重なった場合など、全員の承認を得るのに2週間近くかかってしまうこともあった。各ホテルの現場からは「誰の承認を待っている状態なのか、いつ承認される見込みなのか」といった進捗状況が見えないため、もどかしさを感じる声が寄せられていた。
 それまでもワークフローシステム導入の案はあったが、拠点の増加に伴い、議論が一気に加速した。専門家に意見を求めたところ「システムを導入してデジタル化すれば、さらにスピード感をもって運営できるようになる」と助言を受け、導入を決定。2022年8月に同補助金を申請した。

<補助金・事業を活用した取り組み>
ワークフローシステム導入 在席時以外でも稟議承認が可能に

 業務効率化を目指し、稟議のほか、同じく紙ベースで提出・運用していた交通費などの経費精算も併せてデジタル化することにした。専門家から紹介された数種類のワークフローシステムの中から、他企業での導入実績なども参考にしつつ、機能とコストの観点で絞り込んだ。同社担当者によると、採用したシステムでは、従来同社で使い慣れていた書類のフォームがほぼそのままシステム上に反映されるよう作り込むことができたため、社員が直感的に操作できる点も決め手になったという。
 導入したシステムでは、役員の手元に稟議書が届いた際にメールによる通知がある。メールに記載されたURLをクリックすれば直接該当の稟議書を確認でき、承認や差し戻し、コメントを入れることも可能になった。PCだけでなくスマートフォンからでも利用できるため、移動中や在宅勤務時、出張先でも稟議書に目を通すことができるようになった。
 決裁対象金額や案件によって承認ルートが異なったため、同社の決裁ガイドラインに合わせた細かいカスタマイズを重ね、1~2カ月かけてシステムを構築した。

<概算費用>

総事業費約310万円 そのうち補助金約200万円

<補助金・事業の活用スケジュール>

申請:2022年8月上旬
交付決定:2022年8月中旬
実績報告提出:2023年9月
額確定:2023年10月
補助金受取:2023年11月

<効果>
稟議回付が大幅時短 ホテルの接客サービス向上へ

 システム導入によって、上層部全員の承認を得るために長い時には2週間程度かかっていた時間が、平均3日程度に短縮された。各ホテルからは業務効率化を歓迎する声のほか、「自分たちの起案した稟議の回付状況が“見える化”され、ストレスが減った」という声も上がっている。稟議書はすべてシステム上に保存・蓄積されるため、ペーパーレス化も図れたほか、決裁後資料一式をプリントアウトして保管する手間や、ジャンルごとに仕分ける手間もなくなった。
 2023年10月には、新型コロナの感染拡大後初めて訪日外国人の数が2019年同月を上回るなど、増加傾向が続く(推計値。日本政府観光局の訪日外客統計資料による)。同社ホテルでも外国人客が大幅に増加。日本人客が主流だったコロナ禍と比べ、言語の違いをはじめ、ゲストから寄せられる問い合わせや要望の質も様変わりし、接客にかかる社員への負荷も大きくなっている。担当者は、「ホテルの現場における事務手続きやデスクワークにかかる労力を限りなく減らすことで、ゲストへ向き合う時間を増やすことができた」と振り返る。今後は社内押印請求簿や会社への各種届出などをシステムに組み入れることも視野に効率化を進め、生み出した時間をホテルでの付加価値サービスの提供に振り向けたい考えだ。