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宴会場フロアに授乳室を整備
~子育て経験あるスタッフからヒアリングし設備充実

活用した支援メニュー(最新版)
宿泊施設バリアフリー化支援補助金(令和6年度)

事業者情報

企業名
株式会社ニュー・オータニ(ホテルニューオータニ)
所在地
東京都千代田区紀尾井町4-1
HP
宴会場フロアに整備された授乳室

 1964年の東京オリンピックを前に「日本初の高層ホテル」として千代田区紀尾井町に開館したホテルニューオータニ。現在の総客室数は1400を超え、国内有数の国際ホテルとして約60年の歴史を持つ。同館は2019年、「宿泊施設バリアフリー化支援補助金」を活用し、宴会場の集まるフロアに授乳室を整備した。

<補助金・事業を利用したきっかけ>
授乳スペース利用の要望はほぼ毎日 一部客室を応急的に利用してきたが…

 1400以上の客室を備える巨大ホテルには、宿泊客のほか、レストランの利用客や結婚披露宴のゲストなど、様々な来館者がいる。従来、館内のトイレにおむつ替えができるスペースはあったものの、授乳やミルク調乳ができる専用スペースはなかった。施設整備を担当するファシリティマネージメント部ファシリティマネージメント課の大髙恵太課長によると、特にゴールデンウィークや夏休みシーズンはファミリー層が増えることもあり、授乳室利用の要望は「昔からほぼ毎日のようにあった」という。
 こうした要望に応えるため、常に1~2部屋の客室を確保しておき、希望者がいれば鍵を渡して利用してもらう、という対応を取ってきた。しかし、鍵を管理する担当スタッフに引き継ぐ必要があり、実際に部屋へ案内するまでには時間がかかる。利用のたびに、都度客室の掃除に入る必要もあった。本来なら稼働させられる客室でもあり、社内でも喫緊の課題として認識されていた。
 同ホテルは2010年から、東京観光財団を通じて多くの補助金を活用し、バリアフリートイレなどの施設整備をしてきた。その過程で案内のスムーズさなどに課題を感じていた授乳室も補助の対象となることを知り、設けることにした。2018年末、翌年度の予算を組む段階で事業の計画がスタートした。

<補助金・事業を活用した取り組み>
子育て経験あるスタッフからヒアリングし備品設計 間口のサイズに苦労も

授乳室内には粉ミルクを調乳できる設備も

 広さ6畳ほどの授乳室には、大きめの一人掛けのソファのほか、おむつ交換台などを設置。粉ミルクを飲ませることができるよう、調乳用の浄水器や専用ポットも用意することにした。
 備品は、子どものいるスタッフから何度もヒアリングをして決めた。「授乳のために座ったときに荷物を置く棚がほしい」などの声にあわせて実際にサンプルをつくり、椅子の高さや硬さ、棚の高さに至るまで議論を重ね、サイズ感などを固めていった。
 こうした声と仕様書に基づいた図面を財団に提出し、事前確認を依頼。4、5回ほどのやりとりで、修正を繰り返した。特に扉のサイズについては苦労したという。東京都福祉のまちづくり条例施設整備マニュアルでは、移動等円滑化経路等上にある出入口の場合、扉の有効開口幅は広めの85cm以上と定められている。間口が広い方が出入りはしやすいが、そのぶん扉は大きく、重くなる。赤ちゃんを抱っこしながら片手で開けられるよう、軽い素材を探した。6畳の授乳室では、間口のサイズを数cm変更すると、設置する備品のサイズにも影響するため、細かな修正が続いた。

概算費用

補助金額約3,000万円(同時に行ったバリアフリートイレ整備費含む)

補助金・事業の活用スケジュール

申請:2019年2月
交付決定:2019年6月
施工:2019年8~9月
完成:2019年9月中旬
業者へ支払い:2019年10月
実績報告提出:2020年1月
額確定:2020年2月
補助金受取:2020年3月

<効果>
充実設備でスタッフも自信 希望者を直接案内できるように

 一部客室を授乳室として代用していた際には、利用者が実際に部屋へたどり着くまでに時間がかかっていたが、現在は授乳室に直接アクセスできるようになり、時間短縮になった。もともと要望が多かったこともあり、利用率は高い。現場スタッフからは、鍵を管理していたスタッフへ引き継ぐ手間が省けたほか、調乳の専用設備もあることから「案内がしやすくなった」という声が出ている。
 大髙課長は、財団との図面のやりとりや連携により「現場スタッフやお客様の声を聞き取るだけでは導けなかったかもしれない、最適解を得ることができた」と振り返る。補助金を活用する際は、東京都福祉のまちづくり条例施設整備マニュアル等の規定に沿って施工することになる。こうした規定は「誰もが使いやすい普遍的な設備」の目安だ。「補助金を活用し、その規定を守れば、結果的に世間に求められているものを作ることができる」と話し、金銭面のサポートだけではない補助金の意義を感じたという。