東京観光産業ワンストップ支援センター > 事例紹介一覧 > ホテル外観、屋上インフィニティプールでプロジェクションマッピング ~立川から東京の新たな魅力発信

ホテル外観、屋上インフィニティプールでプロジェクションマッピング
~立川から東京の新たな魅力発信

活用した支援メニュー(最新版)
プロジェクションマッピング促進支援事業助成金(令和6年度)

事業者情報

企業名
株式会社立飛ホスピタリティマネジメント (SORANO HOTEL)
所在地
東京都立川市緑町3-1 W1
HP
プールでのプロジェクションマッピングの様子

 新宿から電車で約30分。JR立川駅の北側に建つSORANO HOTELは、都心への利便性と多摩地区の豊かな自然の両方を感じられるロケーションが魅力だ。最上階の11階にある幅60mのインフィニティプールからは、目の前に広がる昭和記念公園の眺望を楽しむことができ、水平線と一体になったような開放感を味わうことができる。
 同ホテルを運営する株式会社立飛ホスピタリティマネジメントは2023年3月末、「プロジェクションマッピング促進支援事業助成金」を活用し、インフィニティプールとホテルエントランス、2カ所でのプロジェクションマッピングをスタートさせた。4月には一般公開も実施し、多くの人が訪れた。

<補助金・事業を利用したきっかけ>
「新たな癒し体験」の提案 高い付加価値で地元の魅力アップにも

ホテル最上階の11階にある、幅60mのインフィニティプール

 同ホテルは、2020年にオープンした約3.9haの街区「GREEN SPRINGS」の一角にある。「GREEN SPRINGS」は心身共に健やかであることを表す「ウェルビーイング」をコンセプトに掲げて開発された大型複合施設で、ショップやオフィスのほか、約2,500人を収容するホールも備え、新たな価値観やライフスタイルの発信拠点になっている。同ホテルも独自に掘削した温泉を使ったスパや、パーソナルトレーナーによるフィットネスプログラムを提供するなど、来館者の健康に配慮した独自路線を打ち出してきた。
 同ホテルのマーケティングを担う村山加奈子プロジェクトマネージャーは2022年初め頃から、インフィニティプールでのプロジェクションマッピングを検討してきた。温泉水を用いた通年遊泳可能なプールで毎晩投影することは、今までにない癒し体験となり、高い付加価値になると考えたためだ。同ホテルのリピーター獲得に留まらず、街区全体や立川市の魅力アップにもつながる。
 3つのデザイン会社に見積依頼を出していた2022年8月、村山マネージャーはそのうちの1社からの情報で初めて同補助金の存在を知ったという。申請締切が10日後に迫っていた。
 同補助金は5年以上の継続を前提として、建造物などへの投影を通じて多くの人が見学できる事業を対象としている。訪都旅行者の誘致の促進を目的とする補助金であることから、地元等との調整が取れていること(見込みであること)が申請要件であるため、申請にあたって自治体の推薦書が必要になる。発行には時間がかかることが多いが、同ホテルは街区開発などにあたって立川市と日頃から密に連携してきたこともあり、わずか数日間で発行された。「推薦書をスピーディーに出してもらえたおかげで締切に間に合わせることができた」と村山マネージャー。締切までに全ての書類を揃え、申請した。

<補助金・事業を活用した取り組み>
投影コンテンツには地元・立川を意識したモチーフも登場

地元を意識した飛行機のモチーフも登場
トンボやカブトムシ、蝶などの昆虫モチーフは、街区の夜間照明にも用いられている
ホテルエントランスの三角屋根(キャノピー)
波紋が広がっていく様子を表現したプログラムのワンシーン

 インフィニティプールは原則宿泊客しか利用できないが、より多くの人にプロジェクションマッピングを楽しんでもらうため、休館日を利用してプールを一般公開する計画を立てた。また、エントランス上に設置された三角屋根(キャノピー)にも投影することで、街区を訪れた人にも広く楽しんでもらえる仕掛けとした。
 投影するコンテンツは、プールで泳ぐ際に心地良さを感じられるよう「ウェルビーイング」を軸に、穏やかな動きのモチーフを組み合わせた。水平線を見渡せるプールは海のような開放感があることから、クラゲやクジラなどの海の生物がゆったりと泳ぐ姿や、波紋が広がっていく様子、水面がきらめくモチーフなどを多めに取り入れた。また、地元・立川を意識したモチーフも採用。飛行機はホテルオーナー会社の立飛ホールディングスの成り立ちが戦前の飛行機製造にあったこと、トンボやカブトムシといった昆虫は多摩地区の豊かな自然を意識したもので、街区の夜間照明にも用いられている。計20分ほどのプログラムで、各シーンが2~3分ごとに切り替わり、見る人を飽きさせないよう工夫した。11階の屋根の上には機器を4台設置し、幅60mのプールの中央部分30mほどに投影する。ホテル建物の設計図に無い設備を後付けできるスペースが限られていたため、投影機器の設置場所には特に苦労したという。
 エントランス用にも、プールと似たモチーフを用いたプログラムを作成。三角屋根の形状を活かして流れるような動きを多めにセレクトし、雨粒が垂れるような演出なども加えた。
 デザイン会社との調整が難航し、完成は当初の計画よりも数カ月遅れたが、2023年3月末から通年投影をスタートさせた。

<概算費用>

総事業費1,936万円  そのうち補助金 1,200万円

<補助金・事業の活用スケジュール>

申請:2022年8月
交付決定:2022年10月
実績報告提出:2023年5月
額確定:2023年7月
補助金受取:2023年8月

<効果>
一般公開には多くの人 夜間のプール利用率もアップ

 投影初日には、地元商工会や関係者らを招いてお披露目会を開催。翌月に2日間あった休館日には一般公開を実施した。同ホテルのサイトや、メールマガジン会員へのDMなどでPRして、1日あたり50組100名の観覧者を募集したところ、定員を上回る応募があったという。プロジェクションマッピングのスタート以降、夜間のプール利用率は20%ほど上昇。SNSへの投稿数も増加したという。
 プール利用者や一般公開の参加者からは「きれいで癒される」という好意的な感想のほか、「ショーとして見たときに、派手な動きが少なく物足りない」という意見もあったことから、8月からは華やかで動きのある15分ほどのプログラムを新たに制作し、投影を始めた。インフィニティプールが見渡せるルーフトップバーは、夜間は子どもの利用を受け付けていなかったが、11月からは20時まで子どもも利用できるように変更し、より多くの人に楽しんでもらう工夫も続けている。
 プールは温泉水を使っているため、冬には湯気が出る。そこに投影すると、湯気が光を反射して立体的に見え、通常とは違った雰囲気になるという。村山マネージャーは「季節に合わせてプログラムをアップデートするなど、今後も『何度でも立川まで行きたい』と思ってもらえるよう、新たな魅力を発信していきたい」と語る。