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48年間活躍した名車両のコンセプトルーム
~鉄道ファンや家族連れの心つかむ

活用した支援メニュー(最新版)
宿泊施設活用促進補助金

事業者情報

企業名
東急ホテルズ&リゾーツ株式会社(渋谷エクセルホテル東急)
所在地
東京都渋谷区道玄坂1-12-2
HP
東急8500系をテーマにしたコンセプトルーム

 渋谷エクセルホテル東急は渋谷駅直結の25階建てシティホテル。2000年4月に開業し、客室は計408室を有する。同ホテルは2022年、客室2部屋を1975年から2023年まで活躍した東急電鉄の車両「8500系」のコンセプトルームに改修し、2022年10月から期間限定で宿泊受付を開始。家族連れや鉄道ファンを中心に好評を博した。

<補助金・事業を利用したきっかけ>
コロナ禍にあえいだホテル業界、引退間近の車両が打開策のヒントに

 新型コロナウイルスの影響の長期化はホテル業界にも大きな打撃を与えたが、株式会社東急ホテルズ(当時)ではコロナ禍における打開策の一環として、共通の興味や趣向を持つ社員がチームを組み、客足の回復に向けたユニークな企画を日々思案していた。その中には、鉄道好きの社員が集まったグループもあった。2022年春頃、同社と繋がりの深い東急電鉄から、かつて「田園都市線の顔」とも呼ばれた引退間近の8500系車両の部品を貸与してもらえることが分かり、グループ内で「廃車となった車両の部品を活用して、8500系のコンセプトルームを作るのはどうか」という話が持ち上がった。発起人の一人、東急ホテルズ運営統括本部(2022年時点)の石神貴規氏は「長年にわたって親しまれた車両。コンセプトルームを通して、鉄道ファンや東急沿線住民らにその存在を懐かしんだり、肌で感じたりしてほしかった」と振り返る。社員は鉄道ファンばかりではないこともあり、社内での説得は決して容易ではなかったというが、それでも夏には企画実施への青信号が灯った。

<補助金・事業を活用した取り組み>
実際に稼働するライトに扇風機、デスク周りの吊革や網棚… 実車の部品を随所に設え、「本物志向」と車両への愛を感じる客室に

 東急ホテルズの設備担当社員を通して、東京観光財団の「宿泊施設活用促進補助金」について知った石神氏。補助対象となる「都内または近隣他県の顧客を新たに取り込むための事業」として、「せっかくコンセプトルームを作るのなら」と補助金を申請した。2022年10月上旬に交付が決定すると、さっそく客室の改修工事に取り掛かった。コンセプトルームには、17階のツインルーム2室が使われた。
 「より『リアル』を追求したい」という強い思いを抱いていた石神氏らは、競合他社のコンセプトルームについても丹念な調査をした上で改修に臨んだ。実車の部品を巧みに活用し、吊革や網棚をデスク周りに設けたり、実際の座席と同じ素材を使った3、4人掛けのシートを設置したりしただけでなく、多彩なモードで点灯するヘッド/テールライトを壁に組み込み、天井に実際に稼働可能な扇風機を取り付けるなど様々なギミックを施した。さらに、本物の車掌によるエピソードトークと8500系のモーター音を臨場感あるサウンドで体感できる音響機器も備えるなど、徹底した本物志向と半世紀近く親しまれた車両への愛が感じられる部屋に仕上げた。
 工事は約10日間で完了し、2022年10月21日に宿泊予約受付を開始した。

改修工事前の客室(東急ホテルズ&リゾーツ提供)
コンセプトルームに改修後の客室

壁に設置されたヘッド/テールライト
吊革や網棚のあるデスク周り。天井には扇風機も

概算費用

総事業費 約462万円 そのうち補助金 約280万円

補助金・事業の活用スケジュール

申請:2022年9月
交付決定:2022年10月
コンセプトルームへの改修工事実施:2022年10月上旬~中旬
コンセプトルーム宿泊予約受付開始:2022年10月下旬
実績報告提出:2022年12月
額確定:2023年2月
補助金受取:2023年3月

<効果>
週末や大型連休に予約が集中、好評受け期間延長も

東急ホテルズ運営統括本部(2022年時点) 石神 貴規氏

 予約受付開始後、コンセプトルームは鉄道愛好家向け雑誌など複数のメディアで取り上げられ、注目を浴びるようになった。2022年冬頃から週末を中心に客室の予約が増えはじめ、特に2023年の春休みシーズンや5月の大型連休、7月~8月の週末に予約が集中した。客層は家族連れの宿泊が7割を占め、客室の稼働率向上にもつながった。「本物志向」へのこだわりもあってか、利用客からの評価は総じて高く、利用客の反応を受け、2023年8月31日までだった宿泊プランを9月18日まで延長した。
 コンセプトルーム整備を支えた補助金については「とても助かったし、うれしいこと。財団担当者のフォローや説明も丁寧で、非常に感謝している」と振り返り、「事業費の半額以上の補助を受けられたことで、より果敢に事業にチャレンジしようという社内の気運も高まったと感じる。意義や効果は非常に大きい」とその重みを実感している。