ヒルトングループは世界的に環境対策会議が増えていた2008年頃から本格的に環境問題に取り組んでおり、節水、節電、ペーパレス、フードロスなど、昨今環境問題に挙がっている事案を解決するために多くの取り組みをしてきた。
そんな中、ヒルトン東京もペーパレス対策として社内報や従業員の給与明細などをデータ化したり、フードロス対策として廃棄された生ゴミの量をデータ化する管理システムを導入したりしている。また、プラスチックゴミ削減の一環で、客室部では部屋に備え付けられているミネラルウォーターをペットボトルから瓶に変更している。このように、ヒルトングループで掲げられた環境対策の目標を達成すべく、様々な取り組みを実践している。
髙梨チーフエンジニアと中山アシスタントチーフエンジニアの所属する技術部門は館内のシステムを改修して節電や節水を推進する業務も担っており、節電に関しては館内の電球をLEDに変えて電力の削減に貢献した。
一方、節水に関しては一部客室や水を多く使う厨房の水道設備に節水対策がされていなかった。これらを改修したいと考えていた時に「観光事業者による環境対策促進事業補助金」の存在を知り、申請を決めた。
事例紹介
節水設備の導入で、最大21%の節水に成功
~ブランドを守りつつ環境対策を実施するヒルトン東京の事例
- 活用した支援メニュー(最新版)
- 観光関連事業者による環境対策促進事業(令和7年度)
事業者情報
- 企業名
- 日本ヒルトン株式会社(ヒルトン東京)
- 所在地
- 東京都新宿区西新宿6丁目6番2号
- HP
- https://tokyo.hiltonjapan.co.jp/

約60年前に日本に進出したヒルトンは、現在日本各地に系列ホテルを展開し、多くの人に愛されている。
その中でも抜群の立地を誇る「ヒルトン東京」はショッピング、観光、ビジネス、エンターテイメントの中心地である新宿に位置する。
館内のレストランは常に満席近くの利用率で、830室ある客室の稼働率も高く、多くの人に愛されているホテルである。
世界に誇る「ヒルトンブランド」を守りながら、環境対策を推進している同ホテルの取り組みを、日本ヒルトン株式会社 技術部門の髙梨敏志チーフエンジニアと中山福徳アシスタントチーフエンジニアにお伺いした。
<補助金・事業を利用したきっかけ>
環境対策の重要性を認識し、早期からグループ全体で環境問題に取り組む


<補助金・事業を活用した取り組み>
ヒルトンブランドを維持しつつ、節水をするため試行錯誤

ヒルトン東京には前述した通り830室の客室がある。これらの客室はリノベーションを定期的に行っているため節水設備が既に設置されている部屋もあったが、300室は手つかずであった。今回この300室のシャワーヘッドを節水タイプに変更することにした。
シャワーヘッドを節水タイプにすると使用感に変化があり、ヒルトンのサービスを楽しみにしているお客様の満足度が下がることも考えられた。
「ヒルトンスタンダード」にのっとりサービスの品質を下げずに環境対策ができるよう、髙梨チーフエンジニアと中山アシスタントチーフエンジニアは2、3カ月かけて、どのシャワーヘッドを導入するか吟味を重ねた。その結果、使い心地が良く他社で導入事例があり、アフターサービスが充実している製品を選ぶことにした。
設置されたシャワーヘッドは水に空気を含ませることで水の粒が大粒になり、節水をしながらも従来のシャワーヘッドに近い浴び心地が体感できるものであった。
シャワーヘッドとは別に、水の使用量が特に多い従業員食堂、メイン厨房、中華キッチンでも節水対策を実施した。
厨房と水は切っても切り離せず、調理、洗い物など特に水を使う機会が多い。洗い物など節水の余地がある工程内で、客室と同じように、水に空気を含ませるタイプの節水設備を取り付けた。
<概算費用>
総事業費:約827万円
そのうち補助金:約376万円
<補助金・事業の活用スケジュール>
申請:2023年10月
交付決定:2023年11月
実績報告書:2024年6月
額決定:2024年8月
補助金受取:2024年10月
<効果>
客室は約20%、厨房は約10%の節水が実現



節水設備導入後の効果を調査したところ、昨年比で客室は平均約20%、厨房は約10%の節水効果が出た。
客室の節水型シャワーヘッドは、泡が含まれることで、浴び心地が柔らかくなる。お客様の好みにより感じ方は様々だが、「浴び心地が優しくよかった」という感想もある。
ここ数年、連泊の場合は環境問題を意識してリネンの交換を遠慮されるお客様も増えており、ヒルトンの環境に配慮した様々な取り組みがお客様の心にも届いていると感じられることも多い。
また、ヒルトンのレストランは日々多くのお客様が利用されており、お客様へ提供する大量の料理を素早く作る必要がある。
調理作業の中には巨大な寸胴鍋に水を入れる工程もあり、節水設備のついた水道では、最終的に使用する水量は同じなのに水を入れるスピードが下がり、調理の効率が落ちてお客様をお待たせすることになる。
上記は現場のシェフから出た意見であり、お客様をお待たせしないよう、給水のスピードが必要な場所は、節水装置を効果量の少ないタイプに変換して他の水栓との給水量に差をつけるなど工夫をしている。
環境に配慮しながらも、お客様に快適なサービスを届けるため従業員の意見も取り入れながら工夫をしている。
「この補助金はとても良い事業だと思います。環境対策は全世界で進められていることですし、この取り組みが広がり、東京のスタンダードになるといいですね」と話す中山アシスタントチーフエンジニア。今後も同社では積極的に環境問題に取り組んでいくとのことだ。